2022年の年金制度改正!6つの改正点を解説!

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2020年6月5日に公布された年金制度改正法が2022年4月から施行されました。

知らないと損すること、知っておくと得することがあるかもしれません。

ここでは、2022年に施行された年金制度の改正について6つの改正点をまとめています。

2022年の年金制度改正!6つの改正点を解説!

今回の年金制度改正は、高齢者や女性など、より多くの人がこれまでよりも長期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれる中で、今後の社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を目的に改正されました。

大きく変わった点は以下の6点です。

  1. 年金の繰り下げ受給の選択肢が最大70歳から最大75歳に延長(2022年4月)
  2. 年金の繰り上げ受給は1ヵ月当たりの減額率が0.5%から0.4%に縮小(2022年4月)
  3. 在職老齢年金に年金カットのボーダーラインが28万円から47万円に(2022年4月)
  4. 65歳以降も厚生年金に加入して働くと年金受給額が増える(2022年4月)
  5. 確定拠出年金に加入できる年齢が65歳までに延長(2022年5月)
  6. 短時間労働者の社会保険適用条件が緩和される(2022年10月)

人生100年時代と言われる高齢化に伴い、高齢者や女性にもっと働いてもらう施策です。

一つ一つ解説します。

繰り下げ受給の選択肢が最大70歳から最大75歳に延長

(2022年4月から)

年金には、本人の希望で、年金受給開始年齢を早めたり遅らせたりできる「繰り上げ受給」と「繰り下げ受給」の制度があります。

本来、65歳から貰える年金を、

  • 前倒しで貰うのが「繰り上げ受給」
  • 遅らせて貰うのが「繰り下げ受給」です。

繰り上げると繰り上げた期間に応じて月に貰える年金額が少なくなり、繰り下げると繰り下げた期間に応じて月に貰える年金額が多くなります。

従来は、年金の年金受給開始時期の範囲は「60歳から70歳」とされており、繰り下げ受給は70歳までとされていましたが、2022年4月以降は年金の年金受給開始時期の範囲が「60歳から75歳」になり、繰り下げ受給は75歳まですることが可能になりました。

仮に75歳まで延長すると、65歳で貰う場合の年金額の84%増しで貰うことができます。

繰り上げ受給は1ヵ月当たりの減額率が0.5%から0.4%に縮小

(2022年4月から)

一方で繰り上げ受給した時は、従来の制度では、繰り上げを1カ月早めるごとに年金額は0.5%ずつダウンしていましたが、2022年4月からはこれが0.4%ずつのダウンになります。

例えば、60歳(5年繰り上げ)から受け取ると、従来は、30%(0.5%×60ヵ月)減の支給でしたが、2022年4月からは、24%(0.4%×60ヵ月)減の支給になります。

尚、新しい繰り上げの仕組みを使えるのは、1962年4月2日以降生まれの人です。1962年4月1日以前生まれの人は、2022年4月以降に繰り上げ請求しても繰り上げ減額率は、1ヵ月あたり0.5%のままです。

在職老齢年金に年金カットのボーダーラインが28万円から47万円に

(2022年4月から)

60歳以降に厚生年金に加入して働きながら、受給する老齢厚生年金を在職老齢年金といいます。

しかし、給料(給与や賞与の額:総報酬月額相当額)と在職老齢年金の合計額が一定の金額を超えると年金の一部または全部が支給停止となります。

老齢基礎年金は対象外で全額支給されます。

そのボーダーラインは、改正前は、

  1. 60歳から65歳未満で、月収+老齢厚生年金額月額の合計が28万円を超えると在職老齢年金額の一部または全部が支給停止
  2. 65歳以上は、月収+老齢厚生年金額月額の合計が47万円を超えると在職老齢年金額の一部または全部が支給停止

に設定されていましたが、2022年4月からは、

  1. 60歳から65歳未満で、月収+老齢厚生年金額月額の合計が47万円を超えると在職老齢年金額の一部または全部が支給停止
  2. 65歳以上は、月収+老齢厚生年金額月額の合計が47万円を超えると在職老齢年金額の一部または全部が支給停止(変更なし)

となります。

例えば、63歳で月収が30万円、老齢厚生年金月額が10万円の人を例にとると、

  • 改正前は、合計40万円で28万円をオーバーし、年金が6万円((40万円 –  28万円)× 1/2)カットされていたものが、
  • 改正後は、47万円以下なので年金のカットはありません

となります。

また、厚生年金に加入して働きながら老齢年金を繰り上げると、その老齢厚生年金の年金額に対しても上記の支給調整が行われます。

65歳以降も厚生年金に加入して働くと年金受給額が増える

(2022年4月から)

国民年金は基本、60歳になると加入資格がなくなりますが、厚生年金は70歳まで加入できます

改正前は、65歳以上で厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を貰っていても、退職するか70歳になるまでは老齢厚生年金額は再計算されず、老齢厚生年金額は変わりませんでした。

しかし、改正後は、在職中の場合、毎年10月に老齢厚生年金額の再計算がなされ改定が行われます。つまり、働いた分、毎年再計算されて、老齢厚生年金額が増えていくことになります。

確定拠出年金に加入できる年齢が延長

(2022年5月から)

確定拠出年金(DC)とは、加入者ごとに拠出された掛金を加入者自らが運用し、その運用結果に基づいて給付額が決定される年金制度です。

特に自営業者やフリーランスなど国民年金のみしか加入できない人の多くが利用しています。

確定拠出年金(DC)は、大きく分けて、確定拠出年金制度を導入している企業が掛金を負担する企業型DCと、個人が任意で加入して掛金を負担する個人型DC(iDeCo)があります。

改正後は、加入可能年齢が、

  1. 2022年5月から企業型DCは従来の65歳未満から70歳未満
  2. 2022年5月から個人型DC(iDeCo)は従来の60歳未満から65歳未満

に拡大され、加入年齢が5年延びたことで運用期間が長くなり、増やせる可能性も高くなりました。

そして、

  • 2022円4月から受け取り開始時期の上限年齢も「60歳から70歳」から「60歳から75歳」に引き上げ

られました。これは、公的年金の受け取り時期に合わせた対応です。

また、これまでは、勤務している会社で企業型確定拠出年金に加入してしており、企業型確定拠出年金規約で個人型確定拠出年金(iDeCo)への同時加入を認めていない場合は、iDeCoへの加入は認められていませんでしたが、

  • 2022年10月からは、企業型確定拠出年金の加入者が、企業の労使の合意がなくても原則iDeCoに加入できるようになりました

短時間労働者の社会保険適用条件が緩和される

(2022年10月から)

短時間労働者の社会保険(厚生年金保険・健康保険)適用条件が緩和されました。

短時間労働者とは、パートタイムやアルバイトなど、1週間あたりの労働時間が、同じ事業主に雇用されている通常の労働者の労働時間よりも短い労働者のことです。

嘱託や契約社員、臨時社員、準社員などでも、通常の労働者よりも短い労働時間であれば短時間労働者とみなされます。

社会保険に加入すると、貰える老齢厚生年金が増えますので、短時間労働の割合が多い女性には有難い制度と言えます。

従来の制度では、短時間労働者が社会保険に加入することができる条件は、

  1. 特定適用事業所(雇用する被保険者(短時間労働者を除く)が常時501人以上)で働いていること
  2. 週の所定労働時間が20時間以上であること
  3. その会社で1年以上働くことが見込まれること
  4. 月額賃金が8.8万円以上であること
  5. 学生ではないこと

でしたが、改正で、

  • ①は、「雇用する被保険者(短時間労働者を除く)が常時501人以上」という要件は、2022年10月からは「101人以上」2024年10月からは「51人以上」となり、
  • ③の「その会社で1年以上働くことが見込まれること」という要件は、2022年10月から2ヶ月を超えて働くことが見込まれる」こと

に変更になりました。

②と④⑤は従来のままです。

①と③の2点について解説します。

特定適用事業所の要件について

従来は、特定適用事業所として従業員が501人以上の事業所で働いていることが要件にありましたが、改正後は、特定適用事業所の要件が、

  1. 2022年10月からは短時間労働者を除く従業員の総数が101人以上の事業所
  2. 2024年10月からは短時間労働者を除く従業員の総数が51人以上の事業所

という要件に緩和されました。

但し、特定適用事業所でなくても労使合意(会社で働いている方々の2分の1以上と事業主が社会保険の加入に合意)を得ることで、任意特定適用事業所になるための申請をして、社会保険に加入することができます(労使合意に基づく適用)。

健康保険・厚生年金保険の適用の拡大 日本年金機構

その会社で2ヵ月を超えて働くことが見込まれること

短時間労働者が社会保険に加入する要件として、従来は、1年以上の雇用期間が見込まれるという要件が社会保険加入の要件となっていましたが、2022年10月の改正後は、「継続して2ヶ月を超えての雇用見込みがあること」に要件が緩和されました。

改正前・改正後の社会保険適用ルール

対象要件 現行 2022年10月から 2024年10月から
事業所規模の要件 短時間労働者を除く従業員の総数が常時501人以上 短時間労働者を除く従業員の総数が常時101人以上 短時間労働者を除く従業員の総数が常時51人以上
労働時間 週の所定労働時間が20時間以上(変更なし)
賃金 賃金の月額が88,000円以上(変更なし)
勤務期間 雇用期間が1年以上見込まれる 継続して2ヶ月を超えての雇用見込みがあること 継続して2ヶ月を超えての雇用見込みがあること
その他 学生でない(変更なし)
月額賃金とは

短時間労働者が社会保険に加入する要件として、週給・日給・時間給などを「月額に換算したものに各種手当を含めた額が8.8万円以上であること」が必要ですが、賞与や時間外労働、深夜労働などの割増賃金や臨時的な賃金、また、手当でも通勤手当、家族手当、皆勤手当などは含まれないことに注意が必要です。

学生とは

短時間労働者が社会保険に加入する要件として、「学生ではない」ことが必要ですが、休学中の人や夜間学生の人は加入対象です。

まとめ

2022年の年金制度改正!何がどう変わるのか?6つのポイントを解説してきました。

今回の年金法の改正は、基本的には、人生100年時代と言われる高齢化に伴い、高齢者や女性にもっと働いてもらう施策です。

大きく変わった点は以下の6点です。

  1. 年金の繰り下げ受給の選択肢が最大70歳から最大75歳に延長(2022年4月)
  2. 年金の繰り上げ受給は1ヵ月当たりの減額率が0.5%から0.4%に縮小(2022年4月)
  3. 在職老齢年金に年金カットのボーダーラインが28万円から47万円に(2022年4月)
  4. 65歳以降も厚生年金に加入して働くと年金受給額が増える(2022年4月)
  5. 確定拠出年金に加入できる年齢が65歳までに延長(2022年5月)
  6. 短時間労働者の社会保険適用条件が緩和される(2022年10月・2024年10月)

人生100年と言われる時代になりましたからね。

平均寿命が60代の時代とは社会保障の構造も変化し、働ける時間を延ばして社会保障を充実させていくという施策は妥当で、今後も段階的にこういった施策が続くと思われます。