新型コロナウイルスの感染症拡大の影響を受け、3蜜を避けられる移動販売(キッチンカー)事業に人気が出てきています。
近年は、定年後に夫婦で始めようと考えている人や女性一人で始める方も増えているとか。
自分も、移動販売事業を検討したいけど、移動販売ってどういった資格や届け出が必要で開業資金はどれくらい必要なのか、よく分からない人も多いと思います。
そこで、ここでは、移動販売を開業する時に必要な資格や届出、資金などを解説します。
移動販売とは
移動販売とは、固定店舗を持たずキッチンカーなどで物を販売するサービスです。
パンやクレープ、ホットドッグ、焼き鳥、おにぎり、お弁当といった調理食品や、コーヒーやジュースなどの喫茶類を目にした方は多いと思いますが、近年はアパレルやアクセサリーなど食品以外の移動販売も増えてきています。
また、近年は、地方都市や限界集落では人口減少を理由にスーパーなどが撤退や閉店に追い込まれるケースが増えてきており、移動スーパーへの需要も伸びてきています。
それでは、移動販売のメリットとデメリットを見ていきます。
移動販売のメリット
開業資金や運転費用が少なくて済む
事業として移動販売を開業する最大のメリットは、何といっても通常の店舗を開業するのに比べて開業資金やランニングコストが大幅に削減できる点があげられます。
通常の店舗を開業する場合は、物件を借りる保証金や家賃、設備の費用だけで一千万円の資金が必要になることもありますが、移動販売を開業するする場合は、その2分の1か3分の1。
必要なのは、移動に使う車と、什器、備品、販促費、食べ物を販売する場合は、これに調理器具や使い捨て容器くらいです。
また、一般の店舗のように毎月多額の賃料を支払う必要もありませんし、自分ひとりや夫婦で運営していく場合はパートやアルバイトを雇う必要もなく人件費もかかりません。
客が少なければ移動できる
移動販売のメリットには、一定の場所に留まらず移動して販売できるという点もあります。
お客さんが少ない場合は、車を移動させて販売場所を変更することができます。
集客が見込める場所に移動して販売できるという点は移動販売ならではのメリットです。
移動販売のメリットを活かして、オフィス街や繁華街、ショッピングモールや商店街、イベント会場など人が集まりやすい場所を探して出店することで成功しやすくなります。
但し、その場所で販売を行うには許可が必要になります。
後片付けが簡単
通常、移動販売で販売する商品は持ち帰りができる商品なので、ゴミがあまり出ません。
テーブルがなければ、食事の後にテーブルを拭いたり、食器や食べ残しなどのバッシング作業も必要ありませんし、食器を洗うといったことも必要ありません。
普通の店舗に比べて後片付けが非常に簡単なので、調理や販売に専念することができます。
自由に営業できる
営業時間や労働時間、また営業場所を自由に設定できる点も移動販売のメリットです。
副業としても取り組むことができる
移動販売には興味があるけどいきなり本業として取り込むのは不安という方も多いと思います。
人には向き不向きがありますし、初期投資費用もそれなりにかかりますので、始めたはいいけど自分には向かなかったでは済みません。
そう思っている人は、移動販売を副業として初めてみるのも一つの手です。
いきなり車を購入するのではなく、最初は、アルバイトとして働いたり、慣れてきたらキッチンカーをレンタルして週末だけ働いたりします。
これはいけそうだと思ったら本業に向けて準備をしていきます。
移動販売のデメリット
天候や季節によって商品の売れ行きが左右される
移動販売は、外での販売が基本ですので天候や季節によって商品の売れ行きが左右されます。
雨の日や台風の日は出店が中止になることもありますし、当然営業しても売上は落ちます。特に冬の寒い時期や梅雨の時期はイベントも少ないので売上がゼロという日もあるでしょう。
商品によっては、猛暑日や極寒の日で売れ行きが大幅に変わってきます。
また、猛暑日は商品の売れ行きに影響するだけでなく、車内の温度も高くなります。熱中症でダウンする人もいるので気を付けなければなりません。
商品の売れ行きによっては在庫を抱え、食材をロスする可能性もあります。
確かに天気のいい日に公園などで営業しているのを見ると、こういう働き方もよさそうだなと思いますが、雨風の強い日、真夏の暑い日、真冬の寒い日もあることも覚悟する必要があります。
確定申告を自分で行う必要がある
自営業をしていて一定の収入がある人なら誰しもそうですが、移動販売も一定以上の収入が発生したら確定申告をする必要があります。
移動販売の開業資金
移動販売を開業するにはどれくらいの資金が必要でしょうか。
自分で開業する場合とフランチャイズを利用する場合でざっくり試算してみます。
自分で開業する場合
移動販売を自分で一から開業する場合に必要な資金は、およそ250~300万円前後です。
- 移動に使う車両費が大半(200万円程度)を占め
- 車両の装飾費が約10万円
- 設備費(冷蔵庫やガスコンロ、発電機といったもの)に約20万円
- 調理器具に約10万円程度
- 使い捨て容器やチラシ・ホームページなどの販促費が20万円程度
- 許可にかかる費用が5万円程度
必要になります。
車両代は、移動販売車を購入する場合は、200万円~かかりますが、既存の自分の車を改造できるのであればそれだけ開業資金を抑えることができます。
レンタルは割に合わないためおすすめしません。
固定の店舗だと物件の取得費用や店舗の設備(内装や厨房にかかる費用)などで1,000万円ほどかかりますので、よよそ3分の1で済みます。
また、開業後は、店舗の家賃も必要なく、かかってくるのは、
- 車関連費(駐車場代、保険料、ガソリン代)
- 使い捨て容器
- 販促費(チラシなど)
- 出店料
- 商品の材料費(仕入れ)
くらいです。自分ひとりや夫婦でやる場合は人件費もかからないため、開業後の運転資金も少なくて済みます。
フランチャイズを利用する場合
近年は、移動販売のフランチャイズも多く存在します。
フランチャイズであれば、ノウハウや信頼をすでに獲得しており、研修も充実しているため、移動販売を始めてすぐにある程度の収入が見込めます。
必要な届け出や手続きなども本部からのアドバイスを受けられるためスムーズに開業できます。
但し、フランチャイズで移動販売を開業する場合は、加盟店登録料やロイヤリティーが必要になり、通常は、自分で立ち上げるより多くの費用がかかります。
企業によってロイヤリティーや加盟店登録料は異なりますので比較して検討しましょう。
移動販売のフランチャイズは、GoogleやYahooなどで「移動販売 フランチャイズ」「キッチンカー フランチャイズ」で検索するとヒットします。
移動販売を始める時に必要な資格や届け出
移動販売(キッチンカー)を開業するには、運転免許の資格は勿論のこと、食品を扱う場合は、
- 食品衛生責任者の資格と
- 営業許可
- その他(必要に応じて)
が必要となります。
あと、
- 開業届
も出しておくことをおすすめします。
食品衛生責任者の資格
食品衛生責任者は、食品衛生法により、各店舗に1人ずつ配置する必要があります。
移動販売の店舗も例外ではありません。
また、食品衛生責任者の資格は、移動販売で飲食物を販売するために必要な「営業許可」を申請する際にも必要となります。
食品衛生責任者の資格は、調理師や栄養士の資格保有者であれば申請してすぐに取得できますし、資格を持たない方でも保健所が実施する講習を受ければ、1日で取得することが可能です。
資格を取得したら、保健所に行って営業許可の申請を行います。
営業許可
営業許可とは、「保健所の指定する基準を満たした車両に対する許可」です。
ですので、営業する車が2台であれば2台の許可を取得する必要があります。
必要な営業許可は、
- クレープやたこ焼きなど車内で調理を行う「食品営業自動車」
- パンやお弁当などあらかじめ加工した食品を扱う「食品移動自動車」
で異なります。
事前に出店する地域を管轄する保健所の営業許可が必要ですので、複数の管轄地域で移動販売を行う場合は、各自治体の保健所ごとに許可を取る必要があります。
申請費用の目安としては、保健所にもよりますが、1件あたり1万円〜2万円くらいが目安です。
食品営業自動車
食品営業自動車は、クレープやたこ焼き、焼き鳥など、車の中で調理して提供する、いわゆるキッチンカーと呼ばれるものです。
自動車内でできる調理加工は、小分け、盛り付け、加熱処理等の簡単なものに限られ、生ものは提供できません。
営業許可は、
- 喫茶店営業
- 飲食店営業
- 菓子製造業
の3つで、提供する商品が該当するものを取得することになります。
クレープと飲み物を提供する場合は、菓子製造業と飲食店営業の二つの許可が必要になります。
食品移動自動車
飲食移動自動車は、車内で調理を行わないものです。
盛り付けや温めも禁止されており、商品はあらかじめ包装されていなければなりません。
パンの販売や移動スーパーなどがこれに該当します。
営業許可は、
- 乳類販売業
- 食肉販売業
- 食料品等販売業
- 魚介類販売業
の4つで、提供する商品が該当するものを取得することになります。
食品営業自動車と同じで複数の種類の食品を提供する場合は、複数の許可が必要になります。
チェックされるポイント
営業許可を取る際にチェックされるポイントは、
- 調理場と運転席が仕切られているか
- 換気がしっかりできているか
- シンクの数は十分か
- 収納ケースや棚の設置は充分か
- 給水・排水が設置されており容量は十分か
- 石鹸など清潔さが保たれているか
- ふたのあるゴミ箱は設置されているか
- 冷蔵庫・冷凍庫のは設置されているか
などです。
各保健所によって申請の基準が異なるため、事前に活動する地域の保健所に確認をとっておくことをおすすめします。
その他(必要に応じて)
移動販売車の営業許可をとっても、販売場所の許可は別に取る必要があります。
道路上で販売する場合は、管轄する警察署から道路使用許可(3号許可)、公園であれば、公園を管理する団体や国土交通省に認可申請を行います。
また、陸運局や検査場に「特殊なクルマ」と判断された場合は、特殊用途自動車向けのナンバーである「8ナンバー」の交付を受ける必要があります。
開業届
開業届とは、開業してから2か月以内に事業を始めたことを申請するものです。
開業する場所を管轄する税務署に「開業届」を提出します。
できれば、青色申告で申請した方が節税できます。
まとめ
移動販売を開業する時に必要な資格や届出、資金などを解説してきました。
移動販売を自分で一から開業する場合に必要な資金は、およそ250~300万円前後です。
フランチャイズを利用して移動販売を始める場合に必要な資金は、一般的には、ノウハウがすぐに身に付けられる分、自分で開業するより費用がかかります。
移動販売を開業する場合に必要な免許や資格、許可は、
- 運転免許の資格は勿論のこと
- 食品を扱う場合は、食品衛生責任者の資格や営業許可
- また必要に応じて道路使用許可
などが必要になります。
開業したら開業届も税務署に提出するようにしましょう。