寡婦年金とは何か?死亡一時金とは何か?受給要件とその違い

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ここでは、寡婦年金とは何か?死亡一時金とは何か?受給要件とその違いなどを解説します。

寡婦年金とは?

寡婦年金(かふねんきん)とは、国民年金の第1号被保険者の独自の給付制度です。

死亡した夫が会社員(国民年金の第2号被保険者)であった場合は妻に遺族年金が支給されますが、夫が自営業者など国民年金の第1号被保険者であった場合は遺族年金は原則として18歳未満の子がいる場合しか支給されません。

これでは、18歳未満の子がいない残された妻は、自身の老齢年金が支給されるようになるまで収入が途絶える可能性があります。

寡婦年金は、第1号被保険者の救済措置として制度化されたものです。

寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者である夫が年金を受け取る前に亡くなってしまった場合に、その妻が60歳から65歳になるまでの間に支給されます。

寡婦年金の年金額、貰える期間、受給できる要件は以下の通りです。

寡婦年金の年金額

寡婦年金の金額は、夫が死亡した月の前月までの第1号被保険者の期間について計算した老齢基礎年金額相当額の4分の3です。

第1号被保険者の期間には、保険料免除期間や任意加入被保険者の期間を含みます。

令和3年現在の国民年金の老齢基礎年金の満額(保険料納付済期間40年)は780,900円ですので、例えば、第1号被保険者の夫が死亡した時に国民年金保険料を30年間納付していたとすると、夫が貰えたであろう年金額は、585,675円になりますので、寡婦年金の金額は、その4分の3の439,256円となります。

この時、妻が62歳になったばかりであれば、この年金額を65歳になるまで、単純に計算すると439,256円×3年間で131万7,700円ほど貰えることになります。

尚、夫が付加保険料を納付していた場合でも付加年金は加算されません

寡婦年金を受給できる期間

妻が寡婦年金を受給できる期間は、60歳から65歳までの5年間です。

例えば、夫が死亡した時、妻が57歳だった場合は、60歳に達した月の翌月から受給できます。

また、夫が死亡した時、妻が62歳だった場合は、夫の死亡した月の翌月から受給できます。

寡婦年金を受給できる要件

寡婦年金を受給するには以下の全てを満たす必要があります。

  1. 第1号被保険者としての保険料納付期間(保険料免除期間や納付猶予期間、任意加入被保険者の期間を含む)が10年以上の夫の死亡
  2. 夫の死亡時の年齢が65歳未満
  3. 夫の死亡当時、夫によって生計が維持されていたこと
  4. 夫との婚姻関係(内縁の妻などの事実婚を含む)が10年以上続いていたこと
  5. 夫が老齢基礎年金・障害基礎年金を受給したことがないこと
  6. 夫の死亡日の翌日から5年以内に申請すること

まず、寡婦年金を受給できるのはだけです。

65歳未満の夫が死亡した日の前日において国民年金の第1号被保険者としての保険料納付期間(保険料免除期間や納付猶予期間、任意加入被保険者の期間を含む※)が10年以上あり、その夫と10年以上継続して婚姻関係(事実婚を含む)があり、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻が支給の対象となります。

また、夫は老齢基礎年金や障害基礎年金を受給したことがない必要があります。

保険料免除とは、国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合に申請をして保険料の納付の全額あるいは一部が免除になる制度です。
納付猶予とは、20歳から50歳未満の方で、本人・配偶者の前年所得(1月から6月に申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合に、保険料の納付が猶予される制度す。
任意加入とは、本人の申し出により60歳以上65歳未満(65歳誕生日の前月まで)の5年間に、納付月数480ヵ月まで国民年金保険料を納めることで、65歳から受け取る老齢基礎年金を増やすことができる制度です。

寡婦年金の受給資格がなくなるとき

但し、上の要件を全て満たしていても、妻が、

  • 老齢基礎年金の繰り上げ受給をしている場合
  • 再婚(事実婚も含む)をしたり養子となったとき(直系血族又は直系姻族の養子となったときを除く)
  • 寡婦年金ではなく死亡一時金を受け取る場合
  • 死亡した時

は、寡婦年金の受給資格はなくなります。

死亡一時金とは?

死亡一時金も、寡婦年金同様、第1号被保険者の救済措置として制度化された第1号被保険者の独自の給付制度です。

死亡一時金は、第1号被保険者としての保険料納付済期間(保険料免除期間や任意加入被保険者を含む)が3年以上ある者が死亡した場合に遺族に一時的に支給されます。

夫が死亡して残された妻が寡婦年金と死亡一時金の両方の支給要件を満たす場合は、どちらか一方を選択して支給を受けることになります

従って、死亡一時金と寡婦年金のどちらをも受け取る要件を満たしている人は、より多く受け取れる方を選択する必要があります。

死亡一時金の金額

死亡一時金の金額は、国民年金保険料の納付済月数の合計月数によって定められています。

納付済月数の合計月数 金額
36ヵ月以上 180ヵ月未満 145,000円
180ヵ月以上 240ヵ月未満 120,000円
240ヵ月以上 300ヵ月未満 170,000円
300ヵ月以上 360ヵ月未満 220,000円
360ヵ月以上 420ヵ月未満 270,000円
420ヵ月以上 320,000円

付加保険料の納付済月数が、36ヵ月以上ある場合は、上記金額に8,500円が加算されます。

国民年金保険料の納付済月数には、保険料一部免除期間や任意加入被保険者の期間を含みますが、保険料の一部免除により減額された保険料を納めた月数は、下表のように計算されます。

保険料の一部免除 保険料を納めた月数
4分の3免除 4分の1ヶ月
半額免除 2分の1ヶ月
4分の1免除 4分の3ヶ月

死亡一時金を受給できる期間

死亡一時金は、亡くなった方が死亡してから2年経過するまでの間一度だけ貰えます。

死亡一時金を受給できる要件

死亡一時金を受給するには以下の全てを満たす必要があります。

  1. 死亡した者が死亡日の前日において、第1号被保険者としての保険料納付済期間(保険料一部免除期間や任意加入被保険者を含む)が36ヶ月以上ある
    ※保険料一部免除において4分の3免除は4分の1ヵ月、半額免除は2分の1ヵ月、4分の1免除は4分の3ヵ月として計算
  2. 老齢基礎年金・障害基礎年金を受給せずに亡くなられた方
  3. 死亡した日の翌日から2年以内に申請すること

寡婦年金は、妻が60歳から65歳の間貰えるのに対して死亡一時金は妻に限らず、亡くなられた方と死亡時点で生計を同じくしていた遺族(生計を維持されていなくても良い)で、次の優先順位で1度だけ受給することができます。

  1. 配偶者(妻または夫)
  2. 父母
  3. 祖父母
  4. 兄弟姉妹

死亡一時金の受給資格がなくなるとき

但し、上の要件を全て満たしていても、

  1. 遺族が遺族基礎年金の支給を受けられるとき
  2. 死亡一時金ではなく寡婦年金を受け取る場合

は、死亡一時金の受給資格はありません。

寡婦年金と死亡一時金の違い

以上のように、寡婦年金と死亡一時金は、会社員(第2号被保険者)のような遺族年金が、特定の条件下(18歳未満の子供がいる場合)でしか支給されない第1号被保険者の救済措置として制度化されたものです。

比較項目 寡婦年金 死亡一時金
受給できる要件 第1号被保険者として保険料を納めた期間が10年以上の夫が年金を受け取る前に亡くなったとき 第1号被保険者として保険料を納めた期間が36ヵ月以上ある人が年金を受け取る前に亡くなったとき
受給者 その夫と10年以上継続して婚姻関係あり、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻 生計を同じくしていた遺族(死亡した人と生計が同じであれば、生計を維持されていなくても支給される)
受給時期 妻が60歳〜65歳になるまでの間 死亡してから2年経過するまでの間に一度だけ
申請期限 夫が死亡した日の翌日から5年以内 死亡した日の翌日から2年以内
受給金額 夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3相当 死亡した人が保険料を納めた月数に応じて120,000円〜320,000円。尚、付加保険料を納めた月数が36ヵ月以上ある場合は8,500円が加算
その他 どちらか一方しか受けられない

まとめ

寡婦年金と死亡一時金は、遺族年金が、特定の条件下でしか支給されない自営業者など第1号被保険者に救済措置として支払われる年金です。

どちらも受給できる要件を満たしている場合は、通常は寡婦年金の方が貰える金額は圧倒的に多くなりますが、例えば、

  • 40歳など若くして夫が亡くなった場合などは再婚するかもしれない
  • 将来、妻が妻自身の老齢基礎年金を繰上げ受給するかもしれない

などを考えると、その時に一時金か寡婦年金かを選択は難しい問題になります。

長生きして寡婦年金を受け取った後、65歳から妻が自分の老齢基礎年金を受け取るのが最もお得なケースとなります。

尚、夫が会社員と自営業を経験している場合で上記の要件を満たせば、寡婦年金、死亡一時金に加えて、遺族厚生年金を貰う権利も発生します。

この場合は、死亡一時金と遺族厚生年金を受け取るという選択も可能です。