収入の減少や失業等により国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合に利用できる制度に国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度があります。
これらの制度を活用することで、年金の受給資格期間に算入されますので、老齢基礎年金などの各種年金を受給することができなくなるリスクを回避することができます。
未納のままにせず、是非活用するようにしましょう。
ここでは、国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度とはどういう制度か、また、そのメリット・デメリットを解説しています。
国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度とは
国民年金保険料の免除制度とは
国民年金保険料の免除制度とは、本人や世帯主・配偶者の前年度の所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合や失業した場合など、国民年金保険料を納めることが経済的に困難な場合に申請をして保険料の納付の全額あるいは一部が免除になる制度です。
免除を承認された期間は、国民年金保険料の支払いは全額あるいは一部免除されますが、老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金の受給資格期間に算入されます。
納めたくないという個人的な意思は認められません。
本人が、「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」を市区町村に提出し、承認されると保険料の納付が免除されます。
国民年金保険料の免除額
免除には、
- 全額免除
- 4分の3免除
- 半額免除
- 4分の1免除
の4種類があり、前年度(1月から6月までに申請される場合は前々年の所得)の所得基準で免除の割合が決まります。
全額免除以外の一部免除の場合、減額された保険料を納付しないと一部免除が無効になり、未納期間となります。
免除される期間は、7月から翌年6月までの1年間。本人が市区町村に申請書を提出し、承認されると保険料の納付が免除になります。
また、過去に未納期間がある方については申請時点の過去2年1カ月分までさかのぼって免除を申請することができます。
国民年金保険料の納付猶予制度とは
国民保険料納付猶予制度とは、20歳から50歳未満の方で、本人・配偶者の前年所得(1月から6月に申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合に、保険料の納付が猶予される制度です。
納めたくないという個人的な意思は認められません。
免除制度と異なるのは、本人の年齢が20から50歳未満でなければならない点と世帯主の所得が考慮されない点です。
2016年6月以前は申請できるのが20歳以上30歳未満の人に限定されていましたが、2016年7月から対象年齢が20歳以上50歳未満と拡大されました。
本人が申請書をもって市区町村に申請して承認されると、保険料の納付が猶予されます。
尚、この納付猶予は2025(令和7)年6月までの特例です。
国民年金保険料の免除制度や納付猶予制度を受ける条件
国民年金保険料の免除制度や納付猶予制度を受ける条件には、所得などの条件があります。
国民年金保険料の納付が免除になる所得
前年の所得(年収ではあありません)によって免除される金額が異なります。
免除割合 | 前年の所得(令和3年度の場合) |
---|---|
全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 |
4分の3免除 | 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
半額免除 | 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
4分の1免除 | 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
国民年金保険料免除分の追納制度
免除の承認を受けた期間の保険料については、10年以内であれば過去10年に遡って納めることができ、追納した期間の保険料は全額納付として算定させることができます。
国民年金保険料の納付が猶予になる所得
国民年金保険料の納付が猶予される所得
令和3年度の場合、本人及び配偶者の前年所得が以下の計算式で計算した所得以下である場合、国民年金保険料の納付が猶予さます。
- (扶養親族等の数+1)× 35万円 + 32万円
従って、単身世帯の場合は、所得(年収ではない)が67万円までとなります。
国民年金保険料猶予分の追納制度
猶予の承認を受けた期間の保険料については、10年以内であれば過去10年に遡って納めることができ、追納した期間の保険料は全額納付として算定させることができます。
国民年金保険料の免除制度のメリット・デメリット
国民年金保険料を免除の手続きをせずに未納のままにしておくと、その期間は老齢基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間に参入されません。
当然、将来、受け取る老齢年金額も納付していない分、少なくなってしまいますし、納付期間が10年未満の場合は老齢年金が貰えなくなってしまいます。
しかし、免除の手続きをしておくと、免除になっている期間も老齢基礎年金の受給資格期間に加えられ、免除の割合に応じた老齢基礎年金が受け取れます。
免除になっている時の老齢年金額は、全額納付した場合にもらえる年金額に対して、
- 全額免除:2分の1
- 4分の3免除:8分の5
- 半額免除:8分の6
- 4分の1免除:8分の7
です。
免除になっている期間が老齢基礎年金の受給資格期間に加えられる点はメリットと言えますが、追納しない限り将来受け取る老齢年金の額が少なくなるのはデメリットと言えます。
いずれにしても未納のまましている場合よりもメリットがあります。
尚、国民年金保険料の免除が承認されると、付加年金および国民年金基金は利用できません。
国民年金保険料の納付猶予制度のメリット・デメリット
国民年金保険料納付猶予の期間は、老齢基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間にカウントされますが、後から追納しないと老齢基礎年金額の受給額が増えません。
追納は、国民年金保険料追納申込書に必要事項を記入し、マイナンバー確認書類、本人確認書類とともに最寄りの年金事務所にて申請します。郵送でも申請可能です。
猶予になっている期間が老齢基礎年金の受給資格期間に加えられる点はメリットと言えますが、後から追納しなければ将来受け取る老齢年金の額が少なくなるのはデメリットと言えます。
尚、国民年金保険料の猶予が承認されると、付加年金および国民年金基金は利用できません。
まとめ
国民年金保険料の「免除」も「納付猶予」も、経済的な理由で 国民年金保険料を納めることができない場合に利用できる制度です。
どちらも申請をして承認されれば、国民年金保険料の納付が免除または猶予されます。
項目 | 納付免除 | 納付猶予 |
---|---|---|
所得審査 | 本人・配偶者・世帯主 | 本人・配偶者 |
年齢制限 | 20歳から60歳未満 | 20歳から50歳未満 |
受給資格期間への算入 | 算入される | |
老齢年金支給額への算入 | 免除割合に応じて年金額が計算 | 算入されない |
経済的に苦しくなったときは未納のままにせず、免除もしくは納付猶予制度を利用し、後に経済的な余裕ができた時は、追納して将来貰える年金額への影響を極力減らすようにしましょう。