令和に入って年金問題が大きくクローズアップされてきています。
2018年度の国民年金保険料の納付率は68.1%。年金制度への不信感は年々増加していると思われるものの、納付率は過去最低だった2011年度の58.6%から年々改善しています。
年金は、マクロ経済スライド制で、物価の伸び率より抑えられて支給されるものの、破たんすることはまずありません。やはり支払っておいた方が賢明だと思われます。
国民年金保険料の納付率の増加も、年金制度への不信感は増しているものの、やはり老後に頼れるものは公的年金との認識が強くなってきているものと思われます。
公的年金は消費税なども財源となっていますので、年金保険料を支払わなければ、それこそ支払うだけ支払って何も貰えないということになってしまいます。
そして、どうせ支払うのであればお得な方がいいに決まっています。
そこで、ここでは、個人事業主や自営業の人、農業や漁業に従事する人、無職の人などの第一号被保険者が簡単にできる節約術「国民年金保険料の2年前納のやり方」と「国民年金保険料の2年前納にデメリットはないのか」を解説しています。
国民年金保険料の支払いは2年前納がお得
国民年金保険料の前納は国民年金加入者(第一号被保険者)のみができる制度です。
厚生年金に加入しているサラリーマンなどは対象外です。
また、第一号被保険者の人でも近いうちに厚生年金に加入する予定がある人は、修正申告等の手続きが面倒になる場合があるので前納はおすすめできません。
国民年金保険料の支払い方法
国民年金保険料の支払い方法には、
- 納付書(現金)
- クレジットカード
- 口座振替
などがあります。
納付書(現金)
納付書は、日本年金機構から届く「領収(納付受託)済通知書」を金融機関や郵便局、コンビニエンスストアなどに持ち込み、現金で支払う方法です。
クレジットカード
クレジットカードは、「国民年金保険料クレジットカード納付(変更)申出書」を年金窓口に提出して、クレジットカードで支払う方法です。
口座振替
口座振替は、金融機関か年金事務所へ「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書」を提出して、口座振替で支払う方法です。
国民年金保険料の早割と前納制度
国民年金保険料の支払いには、通常の翌月末振替のほかに、1ヵ月早く支払う早割と、先の分までまとめて支払う前納という制度があります。
早割と前納の種類
- 当月末振替(早割)
- 6ヶ月前納
- 1年前納
- 2年前納
そして、早割と前納には割引が適用されます。
支払い方法と早割・前納制度
前納はすべての支払い方法で可能ですが、早割は口座振替でしかできません。
支払い方法 | 納付書(現金) | クレジットカード | 口座振替 |
---|---|---|---|
通常の翌月末振替 | ○ | ○ | ○ |
早割 | × | × | ○ |
6ヵ月前納 | ○ | ○ | ○ |
1年前納 | |||
2年前納 |
国民年金保険料の早割と前納による割引額
国民年金保険料を早割または前納で支払った場合は、割引があります。
しかし、割引額は、口座振替で支払った場合と納付書(現金)やクレジットカードで支払った場合で異なるため注意が必要です。
では、国民年金保険料を早割や前納で納付した場合のそれぞれの割引額はどれくらいか。
令和2年の国民年金保険料(16,540円)を口座振替で支払ったケースで計算してみます。
年度によって金額は少し変わってきますので目安として参考にして下さい。
口座振替で当月末振替(早割)する場合
国民年金保険料の納付期限は翌月末ですが、当月末に口座振替することを「早割」といいます。
早割は、口座振替時のみに適用され現金納付やクレジットカードの場合は適用されません。
納付額は、16,540円が16,490円となり、年間600円(月額50円)の割引となります。
納付期限より1ヶ月早く口座振替されるだけで年間600円割引されますので、6ヵ月分~2年分を前納できる余裕の無い人でも手続き一つで簡単に節約可能です。
口座振替で前納する場合
6ヶ月前納
6か月前に前納(口座振替)する場合は、
納付額は、99,240円が98,110円となり、年間2,260円(半年で1,130円)の割引となります。
1年前納
1年前に前納(口座振替)する場合は、
納付額は、198,480円が194,320円となり、年間4,160円の割引となります。
2年前納
2年前に(令和2年4月分から令和4年3月分)前納(口座振替)する場合は、
納付額は、397,800円が38,1960円となり、2年間で15,840円の割引となります。
各支払額を2年という期間に合わせて比較すると割引の金額は以下の通りとなります。
2年でお得になる金額(令和2年度) | |||
---|---|---|---|
当月末振替(早割) | 6ヶ月前納 | 1年前納 | 2年前納 |
1,200円 | 4,520円 | 8,320円 | 15,840円 |
このように、国民年金保険料は、2年分前納できれば、ほぼ1ヶ月分が無料になり非常にお得になります。仮に20年間、前納をするとしないとでは16万円近く変わってきます。
尚、以上は、支払い方法が口座振替時の割引額です。
納付書(現金)またはクレジットカードで前納する場合
支払方法が、納付書(現金)及びクレジットカードの場合の割引額は、以下の通り、口座振替時と比較して割引額が少し少なくなります。
2年でお得になる金額(令和2年度) | |||
---|---|---|---|
当月末振替(早割) | 6ヶ月前納 | 1年前納 | 2年前納 |
口座振替のみ | 3,240円 | 7,040円 | 14,590円 |
最もお得なのは、口座振替又はクレジットカードで2年前納
2年前納の場合の割引額は、上記のように口座振替が最もお得ですが、クレジットカードにはポイント還元がありますので、それを考慮するとクレジットカード決済もおすすめです。
2年前納では、38万円程度の金額を決済しますので、例えば還元率が0.5%の場合は、還元されるポイントは2,000ポイント(円)近くになります。
この場合は、クレジット決済が口座振替のお得感を上回ります。
但し、高額ですので限度額オーバーとならないように注意しなければなりません。
国民年金保険料前納の申し込み方法
納付書(現金)で前納を行う場合
6カ月分・1年度分の前納用の納付書は、4月上旬に発送されますのでそれをもとに納付します。
2年度分前納に使用する納付書の発送は、年金事務所への申し込みが必要です。
口座振替で前納を行う場合
国民年金保険料前納の申し込みは、預貯金口座を持っている金融機関または年金事務所(郵送も可)へ「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書」を提出することで行います。
書類は、下記で紹介するリンク先からダウンロードすることができます。
クレジットカードで前納を行う場合
また、クレジットカード決済を希望する場合は、「国民年金保険料クレジットカード納付(変更)申出書」に必要事項を記入の上、年金事務所(郵送も可)へ提出することで行います。
「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書」及び「国民年金保険料クレジットカード納付(変更)申出書」は、ネットからダウンロードすることができます。
尚、クレジットカードで支払う場合の支払い回数は1回払いのみです。
分割払いやリボ払いは利用できません。
また、クレジットカードの情報に変更があった場合は、「国民年金保険料クレジットカード納付(変更)申出書」を再度提出する必要があります。
尚、単なるクレジットカードの有効期限切れの場合は、新しい有効期限の情報がクレジットカード会社から日本年金機構に連絡がいくため、変更手続きの必要はありません。
前納の申し込み期限と口座振替日
前納を開始したい場合は、申し込み期限までに申し込む(提出する)必要があります。
該当期間の前納分が口座から引き落とされ、以降は再度変更するまで同じ前納の仕方で支払うことになります。
前納 | 前納対象期間 | 申し込み期限 | 口座振替日 |
---|---|---|---|
6ヵ月 | 4月~9月 | 2月末 | 4月末 |
10月~翌年3月 | 8月末 | 10月末 | |
1年 | 4月~翌年3月 | 2月末 | 4月末 |
2年 | 4月~翌々年3月 | 2月末 | 4月末 |
確定申告の取扱い
国民年金保険料は、確定申告では、社会保険料控除の対象となります。
2年前納した保険料の社会保険料控除については、
- 全額を納めた年に全額を計上して控除する方法
- 各年分の保険料に相当する額を各年に控除する方法
のいずれか一方を選択して申告することができます。
年をまたぐことになりますので3年にわたって分割することになります。
各年分の保険料に相当する額を各年に控除する場合は、3回に分けて納付できるよう3つの金額が記載された控除証明書が送られてきますので該当年度分を切り取って申請します。
実際の国民年金保険料の控除証明書
国民年金保険料2年前納にはデメリットも
2年前納した保険料の社会保険料控除については、前納した金額の全てをその年の社会保険料控除として計上することもできます。
計上した年は社会保険料控除の額が大きいため課税所得が少なくなり、その分納める税金も少なくてすみますが、翌年は社会保険料控除として申請できないため納税額も増えてしまいます。
翌年の収入はわかりませんが、場合によっては、2年分けて計上した方が納税額が少なくてすむ場合もあるため、デメリットといえばデメリットになります。
逆に収入が多い時にまとめて社会保険料控除として計上するといった調整もできますのである程度、翌年の収入とかが予想できるのであればメリットに変えることもできます。
まとめ
どうせ支払わなければならない国民年金保険料ですので、安い方がいいに決まっています。
そんな時に迷わずおすすめなのが、国民年金保険料の2年前納です。
最初に手続きを行えば、2年間で1万5,000円ほどの節約になりますのでおすすめです。
支払う余裕があれば是非活用してほしい節約術です。
尚、冒頭にも書きましたが、第一号被保険者の人でも近いうちに厚生年金に加入する予定がある人は、修正申告等の手続きが面倒になる場合があるので前納はおすすめできません。
また、国民年金保険料を支払っている人は、自営業者等の国民年金の第1号被保険者が多いと思います。従って、この方たちの中にはより年金受給額を充実させるために国民年金基金に加入している人も多いと思います。
この国民年金基金も前納により割引が適用されますので国民年金基金に加入している方は国民年金基金の前納も検討してみて下さい。