金融庁が令和元年6月にまとめた「公的年金だけでは不足する金額2,000万円」は、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯がその先30年ほど生きるとした場合の金額です。
当然、このモデルケースに当てはまらない場合は必要となる資金も大きく変わってきます。
例えば、男女ともに増加傾向にあると言われている高齢単身者(65歳以上の単独世帯)は、現在600万人以上いるといわれています。
しかし、高齢単身者(65歳以上の単独世帯)のモデルでの「年金だけでは不足する金額」というのはあまり見受けられません。
そこで、ここでは、高齢単身無職世帯が年金だけでは足らない老後資金を、総務省の全国消費実態調査をもとに紹介してみたいと思います。
配偶者との死別などで独身のまま老後を迎える方の参考になればと思います。
高齢単身無職世帯が年金だけでは足らない老後資金はどれくらいか
高齢単身無職世帯の1ヵ月の消費支出額
総務省の平成26年全国消費実態調査によると、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の1ヵ月の消費支出は、
- 男性が、149,260円
- 女性は、153,433円
となっています(税金や社会保険料などは非消費支出としてこの金額には含まれていません)。
消費支出の内訳を見ると男性の場合は以下の通りです。
項目 | 月平均額 |
---|---|
食費 | 38.061円 |
住居費 | 14,627円 |
水道光熱費 | 13,300円 |
家具・家事用品 被服及び履物 保険医療 |
14,165円 |
交通・通信 | 18,359円 |
教養・娯楽 | 23,135円 |
その他消費 (雑費・交際費など) |
27,613円 |
合計 | 149,260円 |
高齢単身無職世帯の1ヵ月の可処分所得額
これに対して、65歳以上の単身無職世帯の1ヵ月の可処分所得は、
- 男性が、119,029円
- 女性は、121,411円
となっています。
可処分所得とは、実収入から税金や社会保険料などの非消費支出を引いた後の金額です。
そして、実収入のうちの90%ほどが社会保障給付(年金)です。
尚、今の制度では年金の支給開始年齢を例えば70歳に繰り下げると年金額は42%増額されます。
長生きリスクを考えると貯蓄と相談して年金の繰り下げ受給をするのもありです。
その他にも、将来、受け取る年金額を増やす手段はいくつかありますので見落とさずに、できる対策は取るようにしましょう。
高齢単身無職世帯の年金だけでは不足する額
以上により、高齢単身無職世帯の年金だけでは不足する月額金額は、消費支出額から可処分所得額を差し引いて、
- 男性は、30,231円(149,260円 – 119,029円)
- 女性は、32,022円(153,433円 – 121,411円)
となります。
従って、65歳からの30年間で不足する金額は、それぞれ、
- 男性は、1,088万円(30,231円 × 360ヵ月)
- 女性は、1,153円(32,022円 × 360ヵ月)
とになり、65歳の時点でこれだけの金額を用意しておく必要があるということになります。
話題となった老後資金2,000万円不足とはモデルケースが異なりますが、モデルケースが異なるだけで900万円ほども違ってきますのでやはり環境による差が大きいことがわかります。
モデルケース | 夫婦のみの無職世帯 | 高齢単身無職世帯 |
---|---|---|
不足する額 | 2,000万円 | 1,100万円 |
とはいえ、これもやはり平均値です。
支出の内訳を個別にみると、例えば、住居費は住宅ローンの返済が終わった持ち家の人や借家の人が混在していますし、年金などの可処分所得も個人で大きく異なってきます。
車に乗っている人とそうでない人も混在していますので、年金だけでは足らない老後資金はいくら必要か?にも記載した通り、自分のケースに当てはめて計算してみることが重要です。
そして、介護費用などに備えて少し余裕をもったお金を準備しておくことが理想です。
公的年金だけでは不足する金額を埋めるには
高齢単身無職世帯が年金だけでは不足する金額を埋める場合は、収入を増やすか、支出を減らすかのどちらかしかありません。
- 定年後も再雇用や再就職でできるだけ長く働いて収入を増やす
- 副業をして収入を増やす
- 投資をしてお金を増やす
- 節約をして支出を抑える
といった対策をできるだけ早い時期から始めることが大切です。
下記では、公的年金だけでは不足する金額を埋める対策を詳しくまとめていますので必要に応じて参考にして頂ければと思います。
高齢単身無職世帯が年金だけでは足らない老後資金のまとめ
高齢単身無職世帯が年金だけでは足らない老後資金を、総務省の全国消費実態調査をもとに紹介してきました。
話題となった老後資金2,000万円不足とはモデルケースが異なりますが、モデルケースが異なるだけで1,000万円近くも違ってきますのでやはり環境による差が大きいことがわかります。
モデルケース | 夫婦のみの無職世帯 | 高齢単身無職世帯 |
---|---|---|
不足する額 | 2,000万円 | 1,100万円 |
こうして老後資金を計算した結果、貯蓄や退職金などでを相殺しても不足する場合は、
- 定年後も再雇用や再就職でできるだけ長く働いて収入を増やす
- 副業をして収入を増やす
- 投資をしてお金を増やす
- 節約をして支出を抑える
といった対策が必要になります。
できるだけ早い段階から自分の置かれた環境で老後の生活に最低限必要な資金を算出し、足りない分があればそれをどうやって埋めていくか考え、行動に移すことが重要です。