ここでは、ITコーディネータ試験の概要やその難易度、また、ITコーディネータとして独立することは可能かなどをまとめています。
ITコーディネータ(ITC)とは?
ITコーディネータ(通称:ITC)は、2001年に通商産業省(現・経済産業省)による国家プロジェクトの一環として設けられた民間資格です。
特定非営利活動法人ITコーディネータ協会が運営管理を行っています。
ITコーディネータは、ITと企業経営の両方の知識を持ち、IT技術を活用した経営戦略の作成、業務の効率化・製品の生産性向上を目的としたITシステムの導入など、 経営者の立場に立った各種コンサルティングサービスを行い、IT経営を実現する人材です。
このため、ITの専門知識はもちろん、業務を遂行するにあたってコミュニケーション能力やシステム構築プロジェクト推進のための監理能力なども求められます。
ITコーディネータの多くは企業のIT部門に所属し、自社の経営に貢献していますが、独立して中小企業のIT化を推進している人も少なくありません。
中小企業基本法の中小企業者が、中小企業基盤整備機構や地域産業振興センターなどを通じ、ITコーディネータを利用して企業のIT化を行うと、
- ITコーディネータ派遣費用の負担
- 日本政策金融公庫など政府系金融機関からの融資、無利子リース
- 税制特例措置を利用することが可能
といったことを利用することができますので、一定の需要が期待できる上、独立を後押しする形となっています。
ITコーディネータ | 評価 |
---|---|
受験資格 | なし |
就職・転職に役立つか | |
定年後の再就職に役立つか | |
独立に役立つか | |
難易度 | 普通 |
ITコーディネータ(ITC)になるには
ITコーディネータになるには、
- ITコーディネータ試験または専門スキル特別認定試験に合格する
- ケース研修を受講する
という2つの条件をクリアする必要があります。
試験に合格するのとケース研修を受講するのは、どちらが先でも問題ありませんが、ITコーディネータ試験またはたは専門スキル特別認定試験の合格とケース研修修了の両方を4年以内に満たす必要があります。
上記2つ条件をクリアした後、資格の認定(認定登録料は22,000円:税込)を受けることで、初めてITコーディネータと名乗れるようになります。
資格認定を受けるには有効期限があり、試験の合格か研修の修了いずれか先に受けたものを基準年度とし、4年度以内が登録の期限となります。
ケース研修とは
ケース研修とは、ITコーディネータ資格認定に必要となる研修プログラムで年2回開催されます。
ケース研修の期間は約4ヵ月ほどで費用が22万円(税込)かかります。
ケース研修のカリキュラムは、
- eラーニング
- 個人学習
- 集合研修
が平行して行われます。
ケース研修の修了基準として出席率や提出物を全て提出することなどがあります。
資格を維持するには
ITコーディネータの資格を維持するには、毎年、更新手続きを行う必要があります。
資格保持者には最新の経営とITに関する知識を維持するための継続的な学習と実践能力維持向上のための実務活動報告が義務づけられており、更新の条件として、
- 更新前年度の実践力ポイント合計が10ポイント以上あること
- 更新前年度の「実務活動報告書(アンケート)」が提出されていること
- 更新手続料:22,000円(税込)が入金されていること
などがあります。
ITコーディネータ試験の概要
受験資格
ITコーディネータ試験は、受験資格は必要ありません。
年齢、学歴、国籍、性別、実務経験等に関係なく誰でも受験できます。
専門スキル特別認定制度(試験免除制度)
ITコーディネータ試験には、専門スキル特別認定制度があります。
専門スキル特別認定制度とは、ITコーディネータ関連の他の資格を専門スキルとして認定し、ITコーディネータ試験の一部免除の特典を受けることができる制度です。
公認会計士や弁理士、税理士や中小企業診断士、技術士、高度情報処理技術者、情報処理安全確保支援士、ウェブ解析士マスターなどの資格を有する者は、専門スキル特別認定試験を受けることになります。
専門スキル特別認定試験は、ITコーディネータ試験(必須60問、選択40問)のうち、必須問題60問のみが出題範囲となります。
試験日時
試験日時
ITコーディネータ試験、専門スキル特別認定試験ともに、年に3回実施されます。
1回につき約1ヵ月の期間が設けられ、その間にCBT方式(コンピュータを使用した受験)で受験者が予め希望した受験日時と受験会場(全国約300ヶ所)で受験できます。
同一開催期間内に1回のみ受験が可能です。
試験の方法と内容
ITコーディネータ試験
CBT多肢選択式100問(必須60問、選択40問)
試験時間:120分
- 必須問題
PGL全体の領域から出題される基本問題 40問
PGLのIT経営共通領域から出題の応用問題 20問 - 選択問題(経営系問題か情報系問題かで以下を選択)
経営系 40問
経営戦略・業務改革・IT戦略
情報系 40問
IT戦略・IT利活用
専門スキル特別認定試験
協会が指定する資格を保有する方のみが対象(選択問題が免除)
CBT多肢選択式60問(必須60問)
試験時間:80分
- 必須問題
PGL全体の領域から出題される基本問題 40問
PGLのIT経営共通領域から出題の応用問題 20問
受験手数料
ITコーディネータ試験:19,800円(税込)
専門スキル特別認定試験:9,900円(税込)
ITコーディネータ試験の難易度
合格基準
合格基準は、非公開です。
ITコーディネータ試験、専門スキル特別認定試験ともに、試験を終了した時点で、「合否結果」と「分野別正答率」が記載された「受験記録」が配布されます。
合格率
ITコーディネータ試験の合格率は例年55~70%前後です。
令和3年は、248名が受験して163名が合格。合格率は65.7%でした。
専門スキル特別認定試験の合格率は例年80~90%以上です。
難易度
ITコーディネータ試験のレベルは情報処理技術者試験の高度情報処理技術者試験と同じスキルレベル4に相当するとされていますが、実際の試験の難易度はさほど高くないのが実態です。
試験自体の難易度は、合格率が60%を超えているところや受験者の感想からも基本情報技術者とさほど変わらないと言われています。
難易度: 普通
合格までの学習時間の目安:350時間
尚、合格までの学習時間の目安は、知識ゼロから合格を目指す場合です。経験やその他保有資格により目安より短期間で合格することが可能です。
ITコーディネータは、民間資格ということもあり、試験に合格しても、高度情報処理技術者試験のように中小企業診断士や弁理士など他の資格を受験する際の受験科目の一部免除などは認められていません。
また、資格手当を出す企業も少ないのが現状ですし、資格手当を出す場合でもその金額は、基本情報技術者と同等で扱われています。
しかし、ITコーディネータになるためには、多額の費用と時間をかけてケース研修を修了する必要がありますので、そういう意味では資格取得の難易度は高くなります。
ITコーディネータとして独立することは可能か
ITコーディネータと他のIT関連資格との大きな違いとして資格の運営母体であるITコーディネータ協会が様々な活動をしてくれる点があります。
ITコーディネータ協会では、将来的に資格を活かして独立を検討したい方、既に独立しているが更なる飛躍と変革を遂げたい方向けのセミナーなどを開催して独立を応援しています。
会員であれば、協会が主催する経営者等とのマッチングシステムやネットワーキングの場などを活用することもできます。
また、中小企業者が、ITコーディネータを利用して企業のIT化を行うと、
- ITコーディネータ派遣費用の負担
- 日本政策金融公庫など政府系金融機関からの融資、無利子リース
- 税制特例措置を利用することが可能
といったことを利用することができるなど、ITコーディネータの活動を後押ししています。
従って、これらを積極的に活用して独立後の営業に役立てることができる点で、ITコーディネータは、他のIT関連資格と比較すると独立しやすい資格と言うことができます。
しかし、余程の経験と実績がなければITコーディネータの資格のみでITコンサルタントとして独立するのは厳しいのが現状で、資格取得者の約半数が高度情報処理技術者、中小企業診断士、税理士、公認会計士などの資格を併せ持って活動しています。
また、独立して安定した収入を稼ぎ続けるためには、異業種懇談会や朝会に参加したり、セミナーなどにも積極的に参加するなど地道な営業が必要となることは他の資格と変わりません。
しかし、逆に、経験豊富で実力もあるのに資格を持たない人、長い時間かけて中小企業診断士や高度情報処理技術者試験を受験する時間がない人は、比較的短期間でITコーディネータの資格を取得し、協会を利用することで独立して成功する可能性があります。
そういう意味では、ITコーディネータの資格取得は、経験と実績を持って定年を迎える方が、ITコンサルタントとして起業する場合の一つの選択肢となります。
尚、ITコーディネータ以外の独立が可能な資格、定年後に役立つ資格、また、受験資格が必要ない資格については、下の記事でまとめていますので参考にして下さい。