ここでは、認定介護福祉士とは何か、認定介護福祉士の取得方法と費用などを解説しています。
認定介護福祉士とは
認定介護福祉士は、介護福祉士のキャリアアップ資格として、2015年に新設された資格です。
心身の状況に応じた介護等を行う者で、居住・施設系サービスを問わず、多様な利用者・生活環境、サービス提供形態等に対応して、より質の高い介護実践を前提とした介護サービスマネジメント、介護と医療の連携強化、地域包括ケア等に対応するための考え方や知識、技術、実践力等を認定介護福祉士養成研修で修得した者とされています。
認定介護福祉士は、介護福祉士(国家資格)と異なり民間資格ですが、介護関連では最上位の資格です。介護福祉士のリーダー的存在として位置づけられています。
認定介護福祉士の資格は、特に試験がある訳ではなく、認定介護福祉士養成研修を受講・修了したのち申請・受理されたら取得できます。
認定介護福祉士の役割
認定介護福祉士は利用者を介助することだけではなく以下の3つの役割が求められています。
- 介護職の小チーム(ユニット等、5~10名の介護職によるサービス提供チーム)のリーダーに対する教育指導、 介護サービスマネジメントを行い、介護サービスの質を向上させる役割(施設・事業所のサービスマネージャー)
- 地域包括ケアを推進するため、介護サービス提供において他職種(医師、看護師、リハビリ職等)との連携・協働を図る役割(介護サービス提供における連携の中核となる者)
- 地域における、施設・事業所、ボランティア、家族介護者、介護福祉士等の介護力を引き出し、地域の介護力の向上を図る役割(地域における介護力向上のための助言)
認定介護福祉士の取得方法
認定介護福祉士を取得するには、認定介護福祉士養成研修600時間の受講が必要です。
認定介護福祉士養成研修は、認定介護福祉士認証・認定機構による認証を受けた団体(日本介護福祉士会や事業者団体、都道府県研修機関や大学など)で実施されます。
認定介護福祉士養成研修600時間は、認定介護福祉士養成研修Ⅰ類と認定介護福祉士養成研修Ⅱ類で構成されており、両方修了する必要があります。
研修修了後に「認定の申請」を行い、その申請を受けた認定委員会が書類審査を行って無事に審査が通れば認定介護福祉士として認定されます。
尚、認定介護福祉士資格は、5年ごとに更新手続きが必要です。更新には、認定介護福祉士の更新に必要とされる実務経験などが必要となります。
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類と認定介護福祉士養成研修Ⅱ類の目的や受講要件、カリキュラムは以下の通りです。
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類の目的
- 介護福祉士養成課程では学ばない新たな知識(医療、リハビリ、福祉用具と住環境、認知症、心理・社会的支援等)を修得し、他職種との連携・協働を含めた認定介護福祉士としての十分な介護実践力を完成させる
- 利用者の尊厳の保持や自立支援等における考え方にたった介護過程の展開を、介護職の小チーム(ユニット等、5~10名の介護職によるサービス提供チーム)のリーダーに対して指導するために必要な知識を獲得する
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類の受講要件(受験資格)
- 介護福祉士としての実務経験が5年以上ある
- 介護職員を対象とする現任研修の受講歴が100時間以上ある
- 研修実施団体の課すレポート課題か受講試験で一定水準以上の成績を修めている
また、実施団体によると、介護職の小チームのリーダーとしての実務経験や、居宅・居住(施設)双方の生活支援の経験をもつことが望ましいとされています。
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類のカリキュラム
履修科目 領域 | 科目 | 時間数 |
---|---|---|
認定介護福祉士養成研修導入 | 認定介護福祉士概論 | 15時間 |
医療に関する領域 | 疾患・障害等のある人への生活支援・連携| | 30時間 |
疾患・障害等のある人への生活支援・連携|| | 30時間 | |
リハビリテーションに関する領域 | 生活支援のための運動学 | 10時間 |
生活支援のためのリハビリテーションの知識 | 20時間 | |
自立に向けた生活をするための支援の実践 | 30時間 | |
福祉用具と住環境に関する領域 | 福祉用具と住環境 | 30時間 |
認知症に関する領域 | 認知症のある人への生活支援・連携 | 30時間 |
心理・社会的支援の領域 | 心理的支援の知識技術 | 30時間 |
地域生活の継続と家族支援 | 30時間 | |
生活支援・介護過程に関する領域 | 認定介護福祉士としての介護実践の視点 | 30時間 |
個別介護計画作成と記録の演習 | 30時間 | |
自職場事例を用いた演習 | 30時間 | |
合計 | 345時間 |
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類の目的
- Ⅰ類で学んだ知識をもって、根拠に基づく自立に向けた介護実践の指導をする力を獲得する
- 認定介護福祉士に必要な指導力や判断力、考える力、根拠をつくりだす力、創意工夫する力等の基本的知識に基づいた応用力を養成する
- サービス管理に必要なツールを整理、改善し、それらから根拠を導きだし、その根拠に基づいた指導をする力を獲得する。生活支援の視点から、地域の介護力を高める力を獲得する
- 介護サービスという特性のもと、チーム運営、サービス管理、人材育成等について必要な専門的な理論に基づき、チーム、 サービス、人材マネジメントを実践し、利用者を中心とした地域づくり(地域マネジメント)に展開できる力を獲得する
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類の受講要件(受験資格)
- 認定介護福祉士養成研修Ⅰ類を修了すること
- 介護職の小チーム(ユニット等、5~10名の介護職によるサービス提供チーム)のリーダー (ユニットリーダー、サービス提供責任者等)としての実務経験を有すること(Ⅱ類では必須)
居宅、居住(施設)系サービス双方での生活支援の経験をもつことが望ましいとされています。
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類のカリキュラム
履修科目 領域 | 科目 | 時間数 |
---|---|---|
医療に関する領域 | 疾患・障害等のある人への生活支援・連携||| | 30時間 |
心理・社会的支援の領域 | 地域に対するプログラムの企画 | 30時間 |
マネジメントに関する領域 | 介護サービスの特性と求められるリーダーシップ、人的資源の管理 | 15時間 |
チームマネジメント | 30時間 | |
介護業務の標準化と質の管理 | 30時間 | |
法令理解と組織運営 | 15時間 | |
介護分野の人材育成と学習支援 | 15時間 | |
自立に向けた介護実践の指導領域 | 応用的生活支援の展開と指導 | 60時間 |
地域における介護実践の展開 | 30時間 | |
合計 | 255時間 |
I類、Ⅱ類ともに、知識を学習しながら、事例の検討や研究、課題に対するレポート提出、演習などを実施して、研修で学んだ内容を現場ですぐに活かせるように、カリキュラムが組まれています。
事前・事後課題は科目毎に設定され、A~Dの4 段階評価とし、D評価(60点未満)の場合は再提出が求められます。評価が「D」の場合は未修了となります。その他、欠席や事前・事後課題の提出が期限内に行われない場合も修了は認められません。
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類と認定介護福祉士養成研修Ⅱ類の全てのカリキュラムを修了するまでは1年以上の時間がかかります。
認定介護福祉士養成研修の受講費用
認定介護福祉士養成研修の受講費用は、およそ60万円です。
条件を満たすと受講費用が大幅に免除されたり、地域によっては、補助金制度を利用できる可能性もあります。
まとめ
認定介護福祉士は、まだ歴史が浅く認知度が高いとは言えませんが、介護福祉士の上位資格にあたり、高い介護スキルがあることを証明できる資格です。
受講費用が高額で認定介護福祉士養成研修は1年半、それ以上の時間がかかりますが、介護の世界でリーダーシップを発揮したい方にはぴったりの資格です。
介護業界は慢性的な人手不足が続いているため、資格取得者は転職にも有利になります。
特に介護に関する知識も豊富な認定介護福祉士は需要が高いと言えます。
また、介護業界はミドル世代が活躍している職場でもあります。
介護事業所で働く人の20%以上は60歳以上の人で、70歳以上の方も5%ほど働いています
従って、定年退職後に全くの未経験者が介護業界で働くことは十分可能です。
未経験の方が正社員として採用されるケースもありますが、基本的には少しハードルが高くなります。正社員を目指すのであれば、最初はパートやアルバイトなどからはじめて介護経験を積みながら介護資格を取得することで、契約社員や正社員への道も開けていきます。
介護を必要としている人も自分に近い年代の人に介護をしてもらうことを希望している人は多いと言われています。年齢を重ねたからこその接し方ができ、高齢者やその家族に喜ばれることにつながります。