遺族年金とは?夫が死亡した後、妻はいくら遺族年金が貰えるか

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自分が貰える年金額もさることながら、自分(夫)が亡くなった後、残された妻はいくら遺族年金を貰えるのか、心配事の一つではないでしょうか。

そこで、ここでは、遺族年金とは何かということと、

  1. 夫が会社員で妻が専業主婦の場合
  2. 夫も妻も会社員として働いていた場合
  3. 夫が自営業で妻が会社員として働いていた場合
  4. 夫が自営業で妻も自営業として働いていた場合や専業主婦の場合

のケースごとに、夫が死亡した後、妻はいくら遺族年金が貰えるかについてまとめています。

縁起でもないことですが、残された妻の生活のこともちゃんと考えておく必要があります。

遺族年金とは

老齢基礎年金と老齢厚生年金

まずは、年金について整理します。

年金が貰えるといった場合の年金は、正確には「老齢年金」といいます。

そして、老齢年金には、

  1. 国民年金に加入して要件を満たした人が貰える「老齢基礎年金」と
  2. 厚生年金に加入して要件を満たした人が貰える「老齢厚生年金

があります。

老齢基礎年金

老齢基礎年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人に加入が義務付けられている国民年金に10年以上加入している人が貰える年金です。

この10年には、保険料納付済期間のほか保険料免除期間も含まれます

20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納めた場合、65歳から満額(年間約78万円)の老齢基礎年金が貰えます。

老齢厚生年金

老齢厚生年金は、第2号被保険者(厚生年金に加入している会社員等)が貰える年金です。

厚生年金には国民年金にはない扶養制度があります。

妻が専業主婦または年収130万円未満で夫に扶養されている第3号被保険者の場合は、夫の負担する厚生年金保険料に妻の保険料も含まれており妻は年金保険料を支払う必要はありません。

この扶養制度がある点が、国民年金とは大きく違う点です。

尚、第2号被保険者に扶養される配偶者(第3号被保険者)は、年間130万円以上の収入を得た場合、扶養から外れて第1号被保険者になります。

さらに、厚生年金には国民年金も含まれているので、会社員や公務員だった人は老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方が貰えます。

しかし、自営業者(第1号被保険者)だった人や会社員や公務員(第2号被保険者)に扶養されている専業主婦など(第3号被保険者)は老齢基礎年金だけしか貰えません。

被保険者種別 貰える年金
自営業者、フリーランサー
無職の人など
第1号被保険者 老齢基礎年金
厚生年金の適用を受ける事業所に
勤務する会社員や公務員等
第2号被保険者 老齢基礎年金+老齢厚生年金
第2号被保険者に扶養されている配偶者
(専業主婦など)
第3号被保険者 老齢基礎年金

遺族基礎年金と遺族厚生年金

遺族年金とは、国民年金または厚生年金の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、残された遺族が受けることができる年金です。

遺族年金を貰うには、亡くなった方が保険料を納付した期間や年金を免除してもらった期間が、合計25年以上あったことが条件になります。

老齢基礎年金を貰える条件は、25年以上の加入から10年以上の加入に緩和されましたが、遺族年金は25年以上の加入が必要なことに注意が必要です。但し、若くして亡くなった場合などは加入期間の3分の2以上保険料納付期間があれば遺族年金が支給されます。

遺族年金には、

  1. 遺族基礎年金
  2. 遺族厚生年金

があります。

亡くなった人が、

  1. 自営業者などの第1号被保険者である場合は遺族基礎年金が、
  2. 会社員など第2号被保険者であるの場合は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方

が支給されます

しかし、遺族基礎年金の支給対象者は、死亡した者によって生計を維持されていた子のある配偶者または子となっているため、子供がいない場合は支給されません。

そして、遺族厚生年金の支給対象者は、死亡した者によって生計を維持されていた妻や子などとなっているため、子供のいない配偶者にも支給されます。

つまり、子どもがいない、または子供が成人している場合、会社員など第2号被保険者が亡くなった場合の遺族年金には遺族厚生年金がありますが、自営業など第1号被保険者が亡くなった場合は遺族年金はないということになります。

死亡した者によって生計を維持されていた、とは、同一の家計で生活をしていた人で、一定の収入以下であれば、生計を維持されていたと見なされます。
そして、ここで言う「子」は、18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子、または、20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級に該当し、婚姻をしていない子を言います。
亡くなった方 遺族年金の種類 支給対象
第1号被保険者である
自営業者など
遺族基礎年金 ・死亡した者によって生計を維持されていた子のある配偶者または子
第2号被保険者である
会社員など
遺族基礎年金
遺族厚生年金
・遺族基礎年金:死亡した者によって生計を維持されていた子のある配偶者または子
・遺族厚生年金:死亡した者によって生計を維持されていた妻や子など

パターンごとに具体的に見ていきます。

尚、前提条件として、子供がなく、夫も妻も年金が貰える要件をクリアし、65歳以上で年金を受給しているものとします

遺族年金!夫が死亡した後、妻はいくら年金が貰えるか

では、夫が死亡した後、妻はいくら遺族年金が貰えるでしょうか。

  1. 夫が会社員で妻が専業主婦の場合
  2. 夫も妻も会社員として働いていた場合
  3. 夫が自営業で妻が会社員として働いていた場合
  4. 夫が自営業で妻も自営業として働いていた場合や専業主婦の場合

のケースごとに、夫が死亡した後、妻はいくら遺族年金が貰えるかについて見てみます。

夫が会社員で妻が専業主婦の場合

夫が会社員で妻が専業主婦

夫が会社員(厚生年金)で妻が専業主婦、子供は成人になっているというモデルケースです。

この場合、夫が死亡すると、妻は、遺族基礎年金は貰えませんが、遺族厚生年金として夫の老齢厚生年金の4分の3が貰えます。

夫の老齢年金の全ての部分ではなく、夫の老齢厚生年金の4分の3であることに注意が必要です。子供がいないので遺族基礎年金は貰えません。

夫が会社員で専業主婦の場合の遺族年金の額

妻は、第3号被保険者(専業主婦)として、もともと老齢基礎年金を貰える資格がありますので、結果的に貰える年金額は、

  • 妻の年金額 = 妻の老齢基礎年金 + 夫の老齢厚生年金の4分の3

ということになります。

例えば、夫の老齢基礎年金が月額65,000円、老齢厚生年金が100,000円だったとした場合、

夫の遺族厚生年金は、100,000円の4分の3の75,000円となり、結果、妻の年金額は、自分の老齢基礎年金の月額65,000円と合わせて合計140,000円ということになります。

この合計金額が一般的にどれくらいか調べてみると平均12~13万円程度のようです。

ちなみに、このモデルケースでは、夫が死亡するまでは、夫婦で合計23万円ほどの年金を受け取っており、これがほぼ平均値のようです(夫:16.5万円+妻:6.5万円)。

いわゆる老後2,000万円の問題もこのモデルケースで計算されています。

夫も妻も会社員として働いていた場合

夫も妻も会社員

次に夫も妻も会社員として働き(いわゆる夫婦共働き)、どちらも厚生年金に加入しているケースです。子供も成人になっているとします。

夫も妻も生きている間は、どちらも老齢基礎年金と老齢厚生年金が貰えます。

夫も妻も会社員として働いていた場合の遺族年金の額

この場合において、夫が死亡した場合、妻は自分の老齢基礎年金は引き続き貰えますが、老齢厚生年金については、

  1. 妻の老齢厚生年金
  2. 夫の遺族厚生年金(老齢厚生年金の4分の3)
  3. 夫の遺族厚生年金の3分の2 + 妻の老齢厚生年金の2分の1

の3つを比較して最も多い金額が貰えます。

例えば、夫の老齢厚生年金が10万円で、妻の老齢厚生年金が8万円だったとします。

この場合、

  1. は8万円
  2. は7.5万円(老齢厚生年金10万円の4分の3)
  3. は9万円(遺族厚生年金7.5万円の3分の2で5万円+ 妻の老齢厚生年金の2分の1で4万円)

となり、一番多い③の9万円から、現在貰っている①の老齢厚生年金8万円を差し引いた1万円がプラス支給されます。

結果、妻は、9万円と老齢基礎年金(6.5万円)の合計額15.5万円が年金として貰えます。

夫が自営業で妻が会社員として働いていた場合

夫が自営業で妻が会社員

夫が自営業で妻が会社員として働いていた場合です。

私はこのケースに当てはまります。

第1号被保険者である自営業者が亡くなると「子のいる配偶者」もしくは「子」には遺族基礎年金が支払われます。従って、18歳未満の子供がいない場合は遺族基礎年金は貰えません。

遺族厚生年金の支給もありませんので結果的に遺族年金はなしということになります。

結果、自営業の夫が死亡した場合、会社員として働いていた妻の年金額は、自ら加入した老齢基礎年金と老齢厚生年金になります。

夫が自営業で妻が会社員として働いていた場合の遺族年金の額

ちなみに、このケースにおいて、妻が先に亡くなると夫が遺族厚生年金を受給できますが、夫は55歳以上であることが要件に加わります。

妻に支給される遺族年金には年齢要件はありませんから、ここが遺族厚生年金の男女差です。

夫が自営業で妻も自営業として働いていた場合や専業主婦の場合

夫が自営業で妻も自営業または専業主婦の場合

夫が自営業で妻も夫の手伝い(自営業)または専業主婦のケースです。

第1号被保険者である自営業者が亡くなると、「子のいる配偶者」もしくは「子」には遺族基礎年金が支払われます。従って、18歳未満の子供がいない場合は遺族基礎年金は貰えません。

遺族厚生年金の支給もありませんので結果的に遺族年金はなしということになります。

結果、妻が会社員として働いたことがなければ、夫が死亡した場合の年金支給額は、妻自信が加入していた国民年金の老齢基礎年金だけとなり、満額でも月額6万5,000円ほどとなります。

夫が自営業で妻が自営業または専業主婦だった場合の遺族年金の額

こういったケースも多いことから、少し頼りない制度ですが、第1号被保険者には、寡婦年金または死亡一時金の制度が設けられています。

まとめ

以上、遺族年金とは何か、また、夫が死亡した後、妻はいくら遺族年金が貰えるかについて、

  1. 夫が会社員で妻が専業主婦の場合
  2. 夫も妻も会社員として働いていた場合
  3. 夫が自営業で妻が会社員として働いていた場合
  4. 夫が自営業で妻も自営業として働いていた場合や専業主婦の場合

のケースごとに見てきました。

①と②のケースについては、夫が亡くなっても遺族年金制度が機能しますので個人年金に加入するなり、ある程度の貯蓄を残せたりできれば残された妻もどうにか生活していけそうです。

尚、年金の受給額は、繰り下げ受給で増やすことができますが、繰り下げ受給している夫が亡くなった場合でも、遺族年金は、夫が65歳時点で貰うはずだった本来の年金額をもとに計算されることに注意が必要です

一方で、③と④の自営業の夫が亡くなった場合は遺族年金制度は殆ど機能しないため、他の年金に加入するなり、それなりの貯蓄を残すなり、自力たちで年金対策を行う必要が出てきます。

例えば、私の場合、会社員時代が短かかったため、私が亡くなっても妻が貰える遺族厚生年金は殆どありません。従って、妻は厚生年金の適用を受ける事業所にパートとして働き、自ら老齢厚生年金も貰えるようにしています。

残された妻が安心して生活できるよう早めに対策を打つことも夫の責任だと思います。