ここでは、調剤薬局事務関連の資格とその難易度などを解説しています。
調剤薬局事務とは
調剤薬局とは、医師が発行した処方せんを基に薬剤師が薬を調剤し、患者に薬とその薬に関する情報を提供する医療提供施設です。
正式名称は、保険薬局といいます。
調剤薬局事務は、この調剤薬局の事務作業全般を担い、調剤する薬に関する書類の整理や管理、受付や薬局内の雑用など幅広い業務を行います。
具体的には、患者から処方せんを受け取って保険証を確認し、薬の処方を薬剤師へ依頼。
調剤にかかった費用を算出して患者へ自己負担額を請求したり、患者への処方内容をパソコンに入力して調剤録を記録したりします。
特に、レセプトの作成は調剤薬局事務の重要な仕事です。
レセプトとは、実際にかかった医療費から患者が支払った医療費(最大3割)を差し引いた金額を市区町村や健康保険組合などの健康保険の保険者に請求するための明細書のことで、レセプトの作成とは、保険者に診療報酬を請求する業務のことです。
事務職とはいえ、患者の命に関わったり、レセプト(調剤報酬明細書)作成業務に携わるため、専門的な知識やスキルが必要になります。
高齢化社会を迎え、また、医薬分業により調剤薬局数も増加中。
薬剤師だけで業務を回しているところもありますが、ドラッグストアでも調剤併設店が増えたりと需要も増えていますので調剤薬局事務の活躍の場は今後も増えていくと思われます。
景気に左右されることなく、正社員・パート・アルバイトなど自分に合った勤務形態を選びやすいのも魅力のひとつです。
調剤薬局事務は、女性に人気の職業の一つです。
調剤薬局事務の資格
調剤薬局事務は、専門的な知識やスキルが必要になるため、そのスキルを証明できるいくつかの民間資格が用意されています(国家資格はなし)。
但し、近年は、調剤薬局事務の重要な仕事とされるレセプトの作成も全てレセコンが計算してしまう時代なので、資格より調剤補助経験やPCスキルの方が重視される傾向があります。
また、資格の難易度もそんなに高くないため、希少性はありません。そのため、資格取得者は転職や就職に非常に有利という訳ではなく、経験がない者が就職・転職する際にアピールできる程度の資格と考えておいた方がいいでしょう。
ここでは人気がある以下の資格について紹介しています。
- 調剤薬局事務検定試験
- 調剤事務管理士技能認定試験
- 医療保険調剤報酬事務士試験
- 調剤報酬請求事務専門士試験
ここで紹介する資格の保有者は、いずれも、調剤薬局事務に関する基礎的な知識・スキルを保有していることを証明できます。
調剤薬局事務検定試験
調剤薬局事務検定試験は、日本医療事務協会が主催する検定試験です。
2018年より実施された新しい資格試験で、調剤薬局での請求事務業務の基礎的な知識と技能レベルが審査されます。
在宅受験が可能で試験中でも教材を見ながら解答が可能。会場試験でも資料の持ち込みが可能です。合格の目安は、学科・実技それぞれで正答率6割以上です。
およそ8割から9割が合格する調剤薬局事務に関する試験の中では易しい試験です。
受験資格 | 年齢・性別・学歴に関係なく誰でも受験できます。 |
主催 | 日本医療事務協会 |
試験実施時期 | 毎月第4日曜日に実施(但し、連続する2つの試験(例:3月と4月)は受験不可) |
試験の方法 | 学科試験と実技試験を実施(在宅受験または会場受験)90分 |
合格率 | 90%前後 |
難易度 | 非常に易しい |
受験料 | 一般受験:5,500円(税込) 団体受験:4,950円(税込) |
公式サイト | 調剤薬局事務検定試験 |
調剤事務管理士技能認定試験
調剤事務管理士技能認定試験は、技能認定振興協会が主催する検定試験です。
約50年の実績を持ち医療機関からも高い信頼がある資格です。
合格の目安は、学科試験が70点以上の正答率、実技試験が点検・各作成問題ごとに50%以上の正答率かつ3問の合計で70%以上の正答率です。
約6割が合格します。
合格者には「調剤事務管理士」の称号が付与され、認定合格証が交付されます。
受験資格 | 年齢・性別・学歴に関係なく誰でも受験できます。 |
主催 | JSMA 技能認定振興協会 |
試験実施時期 | 学科と実技の試験が年6回奇数月の第4土曜日に実施されます。 |
試験の方法 | 学科試験と実技試験を実施 |
合格率 | 60%前後 |
難易度 | 易しい |
受験料 | 6,500円(税込) |
公式サイト | 調剤事務管理士技能認定試験 |
医療保険調剤報酬事務士試験
医療保険調剤報酬事務士試験は、医薬品卸業トップのメディパルホールディングスのグループ企業である医療保険学院が実施している認定資格です。
医療保険学院の調剤報酬事務教育講座(4ヵ月)で行われる3回の中間テストに合格後、修了検定試験を受験することができます。
医療保険学院の調剤報酬事務教育講座は、たのまなヒューマンアカデミーの調剤薬局事務の通信講座で受講することができます。
たのまなヒューマンアカデミーでは、この試験の合格保証制度を用意しています。
試験の合格基準は、基本的に正解率が9割前後以上となっています。
受験資格 | 調剤報酬事務教育講座で行われる3回のテストに合格した方 |
主催 | 医療保険学院 |
試験実施時期 | 毎月実施(年12回) |
試験の方法 | 学科試験と実技試験を実施(在宅受験) |
合格率 | 非公開 |
難易度 | 易しい |
受験料 | 4,000円(税込) |
調剤報酬請求事務専門士試験
調剤報酬請求事務専門士試験は、調剤報酬請求事務専門士検定協会が主催する検定試験です。
調剤薬局事務に関する資格には、いくつかの民間資格がありますが、その中でも最も歴史が古く、格や信頼性、知名度が高いと言われているのが調剤報酬請求事務専門士です。
調剤報酬請求事務専門士検定試験に合格すると認定書を発行してもらえ、「専門士」の称号を正式に名乗ることができます。
試験には、1級・2級・3級のレベルがあり、1級は、調剤報酬の基礎・応用を的確に理解し、説明することができる者を想定して試験が実施されます。
2級の難易度は合格率40%とやや易しいレベルですが、1級は、合格率が15%程度と調剤薬局事務の資格の中では最難関の資格となります。
いずれも、試験会場に診療報酬点数表、テキスト、ノートなどの持ち込みが可能です。
受験資格 | 年齢・性別・学歴に関係なく誰でも受験できます。 |
主催 | 調剤報酬請求事務専門士検定協会 |
試験実施時期 | 年2回(7、12月)に実施 |
試験の方法 | 学科試験と実技試験を実施 |
合格率 | 1級:15%~20% 2級:35%~45% 3級:50%~60% |
難易度 | 2級 医療事務関連資格の中では難易度は高め |
受験料 | 1級:6,380円 2級:5,280円 3級:5,280円 |
公式サイト | 調剤報酬請求事務専門士検定協会 |
調剤薬局事務の資格の難易度
それぞれの資格の難易度はおよそ以下の通りとなります。
調剤薬局事務資格 | 資格の特徴 | 難易度 |
---|---|---|
調剤薬局事務検定試験 | 2018年より実施された新しい資格試験で、およそ8割から9割が合格する難易度が低い試験 | 非常に易しい |
調剤事務管理士技能認定試験 | 約50年の実績を持ち医療機関からも高い信頼がある資格 | 易しい |
医療保険調剤報酬事務士試験 | 医療保険学院の調剤報酬事務教育講座で行われる3回の中間テストに合格した者に受験資格が与えられます | 易しい |
調剤報酬請求事務専門士試験 (2級) |
調剤薬局事務の資格の中では最も難易度が高い試験 | やや易しい |
まとめ
調剤薬局事務関連の資格やその難易度などを解説してきました。
調剤薬局事務への就職や転職にあたっては、経験者やパソコンのスキルが高い人のほうが優遇される傾向がありますが、未経験者が調剤薬局事務の仕事に就くためには、調剤薬局事務に関する資格を取得したり、知識を習得しておけば有利になる場合があります。
特に、ここて紹介した資格の中では、調剤報酬請求事務専門士がおすすめです。
実際、50代、60代でも活躍されている人は少なくありませんし、シニアへの求人もあります。
医療業界で働きたい場合、資格が活かせるのはどちらかというと医療事務や登録販売者などの方です。医療業界で働きたい場合はこれらを検討してみるのもいいと思います。
受験資格も必要ないため誰でも受験することができます。