ここでは、国内旅行業務取扱管理者とはどういう資格か?また、国内旅行業務取扱管理者試験の難易度や合格率などをまとめています。
国内旅行業務取扱管理者とは?
旅行業務取扱管理者とは、旅行に関する専門知識や技術を兼ね備え、企画やスケジュール管理など旅行業務の全てを管理・監督できることを証明できる国家資格です。
旅行業務取扱管理者の具体的な職務は以下のとおりです(旅行業法施行規約第10条)。
- 旅行に関する計画の作成
- 料金の掲示
- 旅行業約款の掲示及び備置き
- 取引条件の説明
- 書面の交付
- 広告に関する事項
- 企画旅行の円滑な実施のための措置
- 旅行に関する苦情の処理
- 契約の内容に係る重要な事項についての明確な記録または関係書類の保管
- 上記に掲げるもののほか、取引の公正、旅行の安全及び旅行者の利便を確保するため必要な事項として観光庁長官が定める事項
そして、旅行業務取扱管理者の資格には、
- 総合旅行業務取扱管理者
- 国内旅行業務取扱管理者
- 地域限定旅行業務取扱管理者
の3種類があり、それぞれ取り扱うことができる旅行商品が異なります。
旅行業務取扱管理者の資格 | 概要 |
---|---|
総合旅行業務取扱管理者 | 国内・海外両方の旅行業務・旅行手配の管理・監督ができる資格 |
国内旅行業務取扱管理者 | 日本国内全域の旅行業務・旅行手配の管理・監督ができる資格 国内旅行業務のみを取り扱うことができる営業所において、その取引に係わる旅行サービスの確実性、取引条件の明確性、そのほか取引の公正、旅行の安全及び旅行者の利便を確保するために必要な管理及び監督に関する事務等を行います。 |
地域限定旅行業務取扱管理者 | 営業所所在地の市町村やそれに隣接する市町村、観光庁長官が定めた区域内の旅行商品の管理・監督ができる資格 |
総合旅行業務取扱管理者は、国内旅行・海外旅行の両方を扱えますが、国内旅行業務取扱管理者は、旅行業務・旅行手配の管理・監督ができる範囲が日本国内の旅行に限られます。
従って、総合旅行業務取扱管理者の方が国内旅行業務取扱管理者の上位資格という位置づけになり、難易度も高くなります。
最初から総合旅行業務取扱管理者を目指すものいいですが、まずは、国内旅行業務取扱管理者を目指し、ステップアップとして総合旅行業務取扱管理者を目指すのが一般的です。
この資格がなくても旅行業界に就職することはできますが、旅行業界に勤めている方にとっては待遇面の向上やキャリアアップにつながり、旅行業界への就職・転職の際は有利になります。
また、旅行業者等は、営業所ごとに1名以上の旅行業務取扱管理者を選任し、一定の管理及び監督業務を行わせることが法律で義務付けられていますので、有資格者は、一定の需要があり職場に不可欠な即戦力として評価されます。
主な就職先は、旅行会社のほか、旅行代理店、航空業界、鉄道・バス業界、ホテル業界、ブライダル業界、観光案内の窓口、旅行系専門学校の講師などです。
営業保証金や基準資産などを準備すれば独立も可能です。
ここでは、最も受験者数の多い国内旅行業務取扱管理者試験について解説します。
国内旅行業務取扱管理者試験 | 評価 |
---|---|
受験資格 | なし |
就職・転職に役立つか | |
定年後の再就職に役立つか | |
独立に役立つか | |
難易度 | やや易しい |
国内旅行業務取扱管理者試験の概要
国内旅行業務取扱管理者試験は、観光庁長官の試験事務代行機関である一般社団法人 全国旅行業協会(ANTA)により実施されます。
受験資格
国内旅行業務取扱管理者試験を受けるのに受験資格は必要ありません。
年齢、学歴、国籍、性別、実務経験等に関係なく誰でも受験できます。
試験日時
試験日時
国内旅行業務取扱管理者試験は年1回実施されます。
例年、6月下旬から7月上旬に受験願書の受付がなされ、9月の日曜日に試験が実施されます。
試験時間は、13:30~15:30の2時間です。
科目免除制度
次に該当する者は試験の免除を受けることができます。
- 前年度実施の国内旅行業務取扱管理者試験の「国内旅行実務」において合格点を得た者については、試験科目のうち「国内旅行実務」の科目について試験の免除を受けることができます
- 一般社団法人 全国旅行業協会が実施した本年度もしくは前年度の国内旅行業務取扱管理者研修修了者については、試験科目のうち「国内旅行実務」の科目について試験の免除を受けることができます
- 地域限定旅行業務取扱管理者資格を有する者は、「法令科目」の科目について試験の免除を受けることができます
- 地域限定旅行業務取扱管理者資格を有し、かつ、国内旅行業務取扱管理者研修を修了した者は、「国内旅行実務」と「法令科目」について試験の免除を受けることができます
国内旅行業務取扱管理者研修の受講資格は旅行業者または旅行業者代理業者に最近5年以内に3年以上勤務しており、現在も引き続き旅行業務に従事している者を受講条件としています。
試験地
北海道(札幌市)、宮城県(仙台市)、埼玉県、東京都、愛知県(名古屋市)、京都府(京都市)、広島県(広島市)、福岡県(福岡市)、沖縄県(那覇市)
試験の方法と内容
試験は、筆記試験(マークシート形式)で実施されます。
国内旅行業務取扱管理者の試験科目 | 試験内容 |
---|---|
旅行業法及びこれに基づく命令 (25問100点) |
旅行業の登録、旅行管理業務、広告や取引内容の交付などの法令や命令について出題されます |
旅行業約款、運送約款及び宿泊約款 (25問100点) |
契約の締結や解除、旅行会社の基本的な義務、旅行会社が持つ権利などについて出題されます |
国内旅行実務 (38問100点) |
「国内運賃・料金」と「国内観光地理」に分かれます |
尚、総合旅行業務取扱管理者試験は、これに海外旅行実務(海外観光地理、海外旅行実務、出入国法令、国際航空運賃、英語)の科目が加わります。
国内旅行業務取扱管理者試験の難易度
合格基準・合格率
合格基準
「旅行業法及びこれに基づく命令」、「旅行業約款、運送約款及び宿泊約款」、「国内旅行実務」ともに100点満点中60点(60%)以上が合格基準です。
合格率
国内旅行業務取扱管理者試験の合格率は例年40%前後です。
令和3年度の国内旅行業務取扱管理者試験の合格率は41%。
9,910人が受験して、合格者は4,055人でした。
難易度: やや易しい
合格までの学習時間の目安:200時間
合格までの学習時間の目安は、知識ゼロから合格を目指す場合です。
旅行業者または旅行業者代理業者に最近5年以内に3年以上勤務している者は、国内旅行業務取扱管理者研修を受けることで受験科目を一部免除することができ、この場合は比較的簡単に合格することができます。
ちなみに、総合旅行業務取扱管理者試験の合格率は、例年15%前後です。
令和3年度は、2,819人が受験して合格者は175人でした(合格率は6%)。
但し、この合格率は、4科目すべてを受験した人の合格率です。
国内旅行業務取扱管理者試験に合格すると総合旅行業務取扱管理者試験は、「旅行業法及びこれに基づく命令」と「国内旅行実務」が無期限で免除になり、受験科目は、「約款」と「海外旅行実務」の2科目だけとなります。
さらに、国内旅行業務取扱管理者の有資格者が前年度もしくは今年度の研修で「海外旅行実務」を修了した場合、「業法」の科目も免除されますので「約款」のみの受験で済みます。
この免除制度によって1科目のみで受験した人の合格率は90%以上になります。
受験手数料
5,800円
国内旅行業務取扱管理者の資格取得は転職に有利か
新型コロナの影響を受けて旅行需要が落ち込んでいる中、最近では、地域的な感染の拡がりを抑制しつつ、感染症の影響に考慮した「新たな旅のスタイル」が模索されています。
まだしばらくは旅行業界も厳しいとは思いますが、必ず復活すると信じてこの資格取得を目指している人も少なくありません。
国内旅行業務取扱管理者資格は、旅行業界唯一の国家資格であるため、就職時に学生が履歴書に書けば十分にアピール材料になります。
また、経験もあれば転職時も有利になります。
特に国内旅行業務取扱管理者資格は採用条件として必須としている企業も多く見受けられますので、有利になるというより、旅行業界へ転職を考えている場合は持っておかなければならない資格と言えます。
旅行会社は、海外旅行も取り扱うところが多いので、より就職・転職に資格を活かしたいのであれば、総合旅行業務取扱管理者資格の取得がおすすめです。
総合旅行業務取扱管理者の資格は、企業によっては、支店長以上の役職に就くためには必須の条件であったり、資格手当が出たりすることもあります。
難易度は高くなりますが、それだけ就職や転職に有利になります。