社会保険労務士として定年後に独立できるか

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ここでは、社会保険労務士とはどういう職業か、社会保険労務士として定年後に独立するにはどうすればよいか?また、試験の受験資格や難易度などを解説しています。

社会保険労務士とは?

社会保険労務士「社労士」とは、社会保険労務士法に基づいた国家資格です。

社会保険労務士は、企業を経営する上で重要な4大要素「人・物・お金・情報」の中で一番重要な「人」に関するエキスパートとして活躍する専門家で、8士業と言われる資格の一つです。

労働及び社会保険に関する法令に基づいて行政機関に対する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書等を作成し提出手続きを代行することや作成にあたり相談業務に応じること、また、労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類を作成することは社会保険労務士の独占業務です。

社会保険労務士は他の8士業とは違い、独立開業のほか、企業内社労士として働くことも認められています。

従って、社会保険労務士となった場合の進路は、企業勤務か独立を目指すかに分かれます。

企業内社労士とは

企業内社労士とは、企業に就職して会社員として働く方法です。

弁護士や行政書士など、他の士業の資格を持つ者が企業に就職した場合、その企業内において資格を使用した業務を行うことはできません。

しかし、社労士は就職していながら社労士としての業務を行うことが認められています。

そして、独立を目指す場合は、社労士事務所に勤務後、顧客を分けてもらって独立というスタイルが一般的です。

独立が可能な士業とされる資格の中では比較的難易度が高くないことから、定年後に独立を目指す人にも人気があります。

社会保険労務士 評価
受験資格 あり
就職・転職に役立つか
定年後の再就職に役立つか
独立に役立つか
難易度 難しい

社会保険労務士になるには?

社会保険労務士になるには、社会保険労務士試験に合格する必要がありますが、国家試験を受けるには一定の受験資格が定められています

合格後は、連合会に備える社会保険労務士名簿に登録することで社会保険労務士として活動することができますが、社会保険労務士名簿に登録するには、実務経験2年以上又は事務指定講習の修了が必要です。

実務経験2年以上とは、試験合格の前後を問いません。

例えば、試験合格前に、社会保険労務士事務所に1年、試験合格後に、企業の人事部に1年といった勤務期間があれば、登録ができます。

講習は通信教育4ヵ月と面接指導課程4日間のカリキュラムが組まれています。

特定社会保険労務士とは?

社会保険労務士の中には特定社会保険労務士と呼ばれる人もいます。

特定社会保険労務士とは、通常の社会保険労務士の業務に加えて「紛争解決手続代理業務」を行うことができる社会保険労務士のことです。

紛争解決手続代理業務とは、

  1. 個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続の代理(紛争価額が60万円を超える事件は弁護士との共同受任が必要)
  2. 個別労働関係紛争解決促進法に基づき都道府県労働局が行うあっせんの手続の代理
  3. 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法及びパートタイム労働法に基づき都道府県労働局が行う調停の手続の代理
  4. 個別労働関係紛争について都道府県労働委員会が行うあっせんの手続の代理

といったことを行うことです。

特定社会保険労務士になるには、社会保険労務士試験に合格後、連合会に登録をして、年1回実施される特別研修を受講後、紛争解決手続代理業務試験に合格する必要があります

紛争解決手続代理業務試験の合格率はおよそ60%ほどです。

社会保険労務士試験の概要

受験資格

社会保険労務士試験を受験するためには、受験資格が必要です。

受験資格は、

  1. 短大卒と同等以上の学歴がある方
  2. 学歴による受験資格がなくても、一定の実務経験がある方
    ・社会保険労務士もしくは社会保険労務士法人又は弁護士もしくは弁護士法人の業務の補助に従事した期間が通算して3年以上になる者
    ・3年以上、労働保険・社会保険手続きなどの人事・労務の経験がある者
  3. 行政書士資格を有している方または厚生労働大臣の認めた国家試験合格者

の3つに分けられます。

厚生労働大臣の認めた国家試験には、司法書士試験や不動産鑑定士試験、1級建築士試験、行政書士試験、土地家屋調査士試験、中小企業診断士試験、情報処理技術者試験(一部を除く)、気象予報士試験などがあります。

細かい規定がありますので下記を参照して下さい。

参考:社会保険労務士試験 オフィシャルサイト 受験資格

科目免除

社会保険労務士試験は、実務経験等により試験科目の一部免除を受けることができます。

以下の条件に該当する方は受験申込み時に申請することで、当該試験科目の免除が決定された科目について試験が免除されます。

  1. 国又は地方公共団体の公務員として労働社会保険法令に関する施行事務に従事した期間が通算して10年以上になる方
  2. 厚生労働大臣が指定する団体の役員若しくは従業者として労働社会保険法令事務に従事した期間が通算して15年以上になる方又は社会保険労務士若しくは社会保険労務士法人の補助者として労働社会保険法令事務に従事した期間が通算して15年以上になる方で、全国社会保険労務士会連合会が行う免除指定講習を修了した方
  3. 日本年金機構の役員又は従業者として社会保険諸法令の実施事務に従事した期間(日本年金機構の設立当時の役員又は職員として採用された方にあっては、社会保険庁の職員として社会保険諸法令の施行事務に従事した期間を含む。)が通算して15年以上になる方
  4. 全国健康保険協会の役員又は従業者として社会保険諸法令の実施事務に従事した期間(全国健康保険協会設立当時の役員又は職員として採用された方にあっては、社会保険庁の職員として社会保険諸法令の施行事務に従事した期間を含む。)が通算して15年以上になる方

その他にも試験科目ごとに細かい免除資格があります。

参考:社会保険労務士試験 オフィシャルサイト 試験科目の一部免除資格者一覧

試験日程・試験地

試験日程

例年、4月から5月にかけて願書配布・願書受付を行い、8月下旬に試験が実施されます。

試験 選択式試験 択一式試験
試験時間 10:30~11:50(80分) 13:20~16:50(210分)

試験地

全国都道府県毎、数ヶ所で試験が行われます。受験申込の際、場所が指定されます。

試験の方法と内容

以下の科目から選択式、択一式(5肢択一)の問題が出題されます。

科 目 選択式(配点) 択一式(配点)
労働基準法および労働安全衛生法 1問(5点) 10問(10点)
労働者災害補償保険法 1問(5点) 7問(7点)
雇用保険法 1問(5点) 7問(7点)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律 6問(6点)
健康保険法 1問(5点) 10問(10点)
厚生年金保険法 1問(5点) 10問(10点)
国民年金法 1問(5点) 10問(10点)
労務管理その他の労働に関する一般常識 1問(5点) 5問(5点)
社会保険に関する一般常識 1問(5点) 5問(5点)
合計 8問(40点) 70問(70点)

社会保険労務士試験は、合格基準点以上を取れば順位に関係なく誰でも合格となります。

受験手数料(令和4年実績)

15,000円

社会保険労務士試験の難易度

合格基準・合格率

合格基準

社会保険労務士試験の合格ラインは、次の2つの条件を満たした者とされています。

  1. 選択式試験は、総得点24点以上かつ各科目3点以上(但し、「雇用保険法」と「健康保険法」は2点以上)
  2. 択一式試験は、総得点45点以上かつ各科目4点以上(但し、「厚生年金保険法」は3点以上)

合格率

例年、5%~7%で推移しています。

令和4年度は、40,633人の受験者に対して合格者数は、2,134人。合格率は5.3%でした。

社会保険労務士試験の難易度

難易度: 難しい

合格までの学習時間の目安:1000時間

社会保険労務士試験おすすめの通信講座

社労士の通信講座としては、高い合格実績を誇るフォーサイトがおすすめです。

フォーサイトの社会保険労務士の合格率(2022年)は、全国平均5.3%に対して22.4%と圧倒的な合格率を誇ります。

社会保険労務士

社会保険労務士として定年後に独立できるか

社会保険労務士として定年後に独立できるか

社会保険労務士試験は、会社員が受験して合格する割合が高い試験です。

逆に言えば、専門学校などに通学しなくても、通信教育などを利用して仕事と両立しながら独学で合格できる試験です。

筆者の身近な人に、50代にも関わらず一念発起して会社を辞め、募集してあった社会保険労務士事務所に転職して、2回のチャレンジで社労士試験に合格し、その後1年ほど勤務した後、顧客を少し分けてもらって独立を果たした人がいます。

年齢はもう60歳になります。

独立して3年ほど経った現在は年収が450万円ほどと言っていましたので、このモデルケースで考えると定年後の独立も決して難しくないことがわかります。

自宅を事務所にしていますので、さほど経費もかからなかったと言ってました。

独立当初は仕事のネットワーク構築に専念する

とはいえ、当初は異業種交流会などに積極的に参加したり営業の電話をかけていたといいます。

異業種交流会で出会った人の中には、定年後に国家資格を取得し、士業(行政書士)として独立した人もいたといいます。

幸い、以前勤めていた社会保険労務士事務所から引き継いだ顧客の口コミで顧客が増えていったこともありますが、独立当初の営業はネットワークを作る上で非常に重要だと言っていました。

ホームページの作成も営業の一つです。

私が依頼されてホームページを作りましたが、当初はせっせとブログを更新していました。

軌道に乗った後はブログの更新もそこそこですが、今でもそのホームページから仕事の依頼や問い合わせがあるようです。

また、商工会議所からセミナーの講師の依頼とかも少なくないと言ってました。

本人はこういった依頼を受けずに何とかやってこれたようですが、仕事が無ければこういったものをどんどん受けていく方が望ましいと言っていました。

どうしても顧客が獲得できないといった場合は、少し費用はかかりますが、社労士マッチングサイトというインターネットのサービスを使うという方法もあります。

専門分野を持つ

自分の社会保険労務士としての強みは何かを示すことが重要です。

「年金に強い」「宿泊業に強い」「助成金の申請に強い」といった一言を名刺に入れておくだけで、顧客を獲得できる確率は上がると言います。

特に今後は、少子高齢化が進みます。年金制度や社会保障制度も非常に複雑ですので、これらの制度に詳しい人への需要は高くなると思われます。

年金アドバイザーなどの資格を併せ持つことで専門性を高めるのも一つの手です。

また、例えば、厚生労働省は令和2年度に中小企業における高年齢労働者の安全・健康対策を支援する助成金を新設する方針があります。

今後は、国をあげて高年齢者が個々の特性に応じた能力を発揮し、安心して活躍できる環境を整備していくことが予想されるので社労士の活躍の場は今後増えていくことが予想されます。

上記の例でもわかるように、社会保険労務士は、定年後でも独立することはそんなに難しくない資格です。但し、一定期間の実務経験を積むことは営業面からも重要です。