国民年金の2年前納のメリット・デメリット

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令和に入って年金問題が大きくクローズアップされてきています。

2019年度の国民年金保険料の納付率は69.3%。年金制度への不信感は年々増加していると思われるものの、納付率は過去最低だった2011年度の58.6%から年々改善しています。

やはり老後に頼れるものは公的年金との認識が強くなってきているのでしょうか。

年金は、マクロ経済スライド制で、物価の伸び率より抑えられて支給されますが、破たんすることはまずありません。やはり支払っておいた方が賢明だと思われます。

しかも、公的年金は消費税なども財源となっていますので、年金保険料を支払わなければ、それこそ支払うだけ支払って何も貰えないということになりかねません。

そして、どうせ支払うのであればお得な方がいいに決まっています。

そこで、ここでは、個人事業主や自営業の人、農業や漁業に従事する人、無職の人などの第一号被保険者が簡単にできる節約術「国民年金保険料の前納」について、そのメリット・デメリットと国民年金保険料の2年前納のやり方を解説しています。

私も国民年金保険料の2年前納をやっています。まだ国民年金保険料を前納をしていない人は是非、2年前納を検討してみて下さい。

国民年金保険料の2年前納のメリット

国民年金保険料の前納は国民年金加入者(第一号被保険者)のみができる制度です。

厚生年金に加入しているサラリーマンなどは対象外です。

そして、国民年金保険料の前納の最大のメリットは割引が適用されることです。

まずは、国民年金保険料の前納制度とその支払い方法を解説します。

国民年金保険料の早割と前納制度

本来、国民年金保険料の納付期限は翌月末です。

しかし、翌月ではなく、当月末に口座振替することを「早割」といいます。

そして、まとまった期間分を先に納める制度もあり、これを「前納」と言っています。

前納には、6ヶ月前納、1年前納、2年前納があります。

  1. 当月末振替(早割)
  2. 6ヶ月前納
  3. 1年前納
  4. 2年前納

国民年金保険料の支払い方法

国民年金保険料の支払い方法には、

  1. 納付書「領収(納付受託)済通知書」
  2. クレジットカード
  3. 口座振替

などがあります。

納付書による納付

納付書を使用して保険料を納付する方法です。

日本年金機構から届く納付書「領収(納付受託)済通知書」を金融機関や郵便局、コンビニエンスストアなどに持ち込み、現金で支払う方法です。

市役所や年金事務所の窓口で納めることはできません。

予め納付手続きを行っておけば、インターネットバンキングやATMを利用して電子納付(ペイジー納付)で納付することもできます。

尚、1枚の納付書の保険料額が30万円を超える場合は、コンビニエンスストアで支払うことはできません。金融機関や郵便局の窓口または電子納付で支払います。

クレジットカード

クレジットカードを提示して直接納付するのではなく、定期的に保険料をクレジットカード会社が立替払いし、後にクレジットカード会社からカード会員の方に請求が行われる納付方法です。

電気料金やガス料金をクレジットカードで支払うのと同じ決済方法です。

クレジットカード支払いを利用するには、年金事務所の窓口に「国民年金保険料クレジットカード納付(変更)申出書」を提出して予め手続きをしておく必要があります。

口座振替

口座振替とは、指定の金融機関(預金口座)から、決められた期日に保険料が自動的に引き落とされる決済方法のことです。

口座振替を利用するには、金融機関か年金事務所の窓口へ「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書」を提出して予め手続きをしておく必要があります。

早割・前納制度と支払い方法

通常の翌月末振替と前納は全ての支払い方法で可能ですが、早割は口座振替でしかできません。

支払い方法 納付書(現金) クレジットカード 口座振替
通常の翌月末振替
早割(当月末振替) × ×
6ヵ月前納
1年前納
2年前納

国民年金保険料の早割と前納には割引がある

国民年金保険料を早割または前納で支払った場合のメリットは、割引があることです。

但し、割引額は、口座振替で支払った場合と納付書(現金)やクレジットカードで支払った場合で異なるため注意が必要です。

では、国民年金保険料を早割や前納で納付した場合のそれぞれの割引額はどれくらいか。

令和5年度の国民年金保険料(16,520円)を口座振替で支払ったケースで計算してみます。

年度によって金額は少し変わってきますので目安として参考にして下さい。

口座振替で当月末振替(早割)する場合

早割は、口座振替時のみに適用され、現金納付やクレジットカードの場合は適用されません

納付額は、16,520円が16,470円となり、月額50円年間600円の割引となります。

納付期限より1ヶ月早く口座振替されるだけで年間600円割引されますので、6ヵ月分~2年分を前納できる余裕の無い人でも手続き一つで簡単に節約可能です。

口座振替で前納する場合

前納は、口座振替、クレジットカード、現金納付でできます

6ヶ月前納

6ヵ月分を前納(口座振替)する場合は、

納付額は、99,120円が97,990円となり、年間2,260円(半年で1,130円)の割引となります。

現金やクレジットカードで納付する場合は、

納付額は、99,120円が98,310円となり、年間1,620円(半年で810円)の割引となります。

1年前納

1年分を前納(口座振替)する場合は、

納付額は、198,240円が194,090円となり、年間4,150円の割引となります。

現金やクレジットカードで納付する場合は、

納付額は、198,240円が194,720円となり、年間3,520円の割引となります。

2年前納

2年分を前納(口座振替)する場合は、

納付額は、402,000円が385,900円となり、2年間で16,100円の割引となります。

現金やクレジットカードで納付する場合は、

納付額は、402,000円が387,170円となり、2年間で14,830円の割引となります。

このように、国民年金保険料は、2年分前納できれば、ほぼ1ヶ月分が無料になり非常にお得になります。仮に20年間、前納をするとしないとでは15万円ほど変わってきます。

最もお得なのは、口座振替又はクレジットカードで2年前納

2年前納の場合の割引額は、上記のように口座振替が最もお得ですが、クレジットカードにはポイント還元がありますので、それを考慮するとクレジットカード決済もおすすめです。

2年前納では、40万円程度の金額を決済しますので、例えば還元率が0.5%のクレジットカードの場合は、還元されるポイントは2,000ポイント(円)ほどになり、この場合は、クレジット決済が口座振替のお得感を上回ります。

口座振替による2年前納の場合の割引額:16,100円 < クレジットカード0.5%還元による2年前納の場合の割引額:16,830円(14,830円 + 2,000ポイント)

但し、高額ですので限度額オーバーとならないように注意しなければなりません。

任意加入も前納が可能

60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たしていない人や、40年の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない人のために、60歳以降でも本人の申し出により国民年金に加入できる任意加入制度があります。

前納は、この任意加入制度においても利用することができます。

任意加入は、手続きの案内等の資料は送られてきません。本人の申し出によるため、本人が市役所や年金事務所に出向き、制度への加入と前納の手続きをする必要があります。

国民年金2年前納のデメリット

一方、国民年金の前納にはデメリットもあります。

国民年金保険料の減免は申請できない

国民年金保険料を前納した期間は国民年金保険料の減免が受けられなくなります

前納した後に何等かの理由で収入が少なくなった場合など、本来なら国民年金保険料の減免が受けられる事情ができても減免を申請することはできません。

コンビニで納付ができない

1枚の納付書の保険料額が30万円を超える場合は納付書によるコンビニ支払いはできません

従って、納付書による2年前納の場合は、納付額が30万円を超えますのでコンビニ支払いはできず、金融機関や郵便局の窓口または電子納付で支払うことになります。

納税額が増える場合もある

2年前納した保険料の社会保険料控除については、

  1. 前納した金額の全てをその年の社会保険料控除として計上することも
  2. 各年分の保険料に相当する額を社会保険料控除として計上することも

できます。

前納した金額の全てを計上した年は社会保険料控除の額が大きいため課税所得が少なくなり、その分納める税金も少なくてすみますが、翌年は社会保険料控除として申請できないため納税額も増えてしまいます。

自営業者などの場合、翌年の収入はわかりませんが、場合によっては、2年に分けて計上した方が納税額が少なくてすむ場合もあるため、デメリットといえばデメリットになります。

逆に収入が多かった場合は、まとめて社会保険料控除として計上するといった調整もできますのである程度、翌年の収入とかが予想できるのであればメリットに変えることもできます。

近い将来、厚生年金に加入する予定がある人は修正申告等の手続きが面倒

国民年金保険料の前納は国民年金加入者第一号被保険者のみができる制度ですので、近いうちに厚生年金に加入する予定がある人は、修正申告等の手続きが面倒になる場合があります。

例えば、2年前納を済ませた後、1年で会社に就職し、厚生年金加入となった場合、1年後からは厚生年金保険料の負担となりますので、1年分の国民年金保険料が還付の対象となります。

この場合、厚生年金加入後、日本年金機構から「国民年金保険料還付請求書」が届きますので年金事務所で手続き行う必要があります。

還付には2年の時効があるため注意しなければなりません。

従って、近い将来、会社に就職する予定がある人などには、手続きが面倒な分、前納はデメリットと言えます。

※尚、令和6年1月からは、あらかじめ口座で受け取る希望を出しておけば、前納した国民年金保険料の還付請求の手続きをしなくても還付されるようになります。

社会保険料控除の申告漏れに注意

2年前納をした場合、国民年金保険料の控除証明書は3枚つづりになって送られてきます。

そして、翌年は送られてきません。

私も確定申告時は、収入の低かった年は1年分づつ、収入の多かった年は3回分(3枚)まとめて控除証明書として提出しているのですが、申請しなかった分はちゃんと保管をしておかないと、翌年、申告漏れを起こす可能性があります。

私も何度か昨年まとめて申告したと勘違いをし、控除証明書はないものと勘違いをし、当該年度の申告が漏れそうになったことがありました。

注意すべき点としてデメリットだと感じています。

国民年金保険料前納の申し込み方法

ここからは、国民年金保険料前納の申し込み方法を解説します。

納付書(現金)で前納を行う場合

納付書(現金)で前納を行う場合、6カ月分・1年度分の前納用の納付書は、4月上旬に発送されますのでそれをもとに納付します。

2年前納をする場合は、予め年金事務所への申し込みが必要です。

毎年2月1日から事前に申出書を受け付けていますので、希望する場合は年金事務所に申し込み、申出書を送ってもらう必要があります。

口座振替で前納を行う場合

国民年金保険料前納の申し込みは、預貯金口座を持っている金融機関または年金事務所(郵送も可)へ「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書」を提出することで行います。

書類は、下で紹介するリンク先からダウンロードすることができます。

私もこの書類を提出して2年前納をしています。

参考:国民年金保険料に関する手続き

クレジットカードで前納を行う場合

クレジットカード決済を希望する場合は、「国民年金保険料クレジットカード納付(変更)申出書」に必要事項を記入の上、年金事務所(郵送も可)へ提出する必要があります。

国民年金保険料クレジットカード納付(変更)申出書」も、上で紹介したリンク先からダウンロードすることができます。

尚、クレジットカードで支払う場合の支払い回数は1回払いのみです。

分割払いやリボ払いは利用できません。

また、クレジットカードの情報に変更があった場合は、「国民年金保険料クレジットカード納付(変更)申出書」を再度提出する必要があります。

尚、単なるクレジットカードの有効期限切れの場合は、新しい有効期限の情報がクレジットカード会社から日本年金機構に連絡がいくため、変更手続きの必要はありません。

前納の申し込み期限と口座振替日

前納を開始したい場合は、申し込み期限までに申し込む(提出する)必要があります。

該当期間の前納分が口座から引き落とされ、以降は再度変更するまで同じ前納の仕方で支払うことになります。

前納 前納対象期間 申し込み期限 口座振替日
6ヵ月 4月~9月 2月末 4月末
10月~翌年3月 8月末 10月末
1年 4月~翌年3月 2月末 4月末
2年 4月~翌々年3月 2月末 4月末

確定申告の取扱い

国民年金保険料は、確定申告では、社会保険料控除の対象となります。

2年前納した保険料の社会保険料控除については、

  • 全額を納めた年に全額を計上して控除する方法
  • 各年分の保険料に相当する額を各年に控除する方法

のいずれか一方を選択して申告できることは先に述べた通りです。

各年分の保険料に相当する額を各年に控除する場合は、3回に分けて納付できるよう3つの金額が記載された控除証明書が送られてきますので該当年度分を切り取って申請します。

実際の国民年金保険料の控除証明書

実際の国民年金保険料の控除証明書

これは、一番左の控除証明書のみを切り取って控除証明書として申請した後の画像です。

残りの2枚は翌年以降に控除申請するというケースです。

まとめ

国民年金保険料の前納は国民年金加入者(第一号被保険者)のみができる制度です。

どうせ支払わなければならない国民年金保険料ですので、安い方がいいに決まっています。

そんな時に迷わずおすすめなのが、国民年金保険料の2年前納です。

最初に手続きを行えば、2年間で1万5,000円ほどの節約になりますのでおすすめです。

支払う余裕があればデメリットを理解した上で是非活用してほしい節約術です。

尚、第一号被保険者の人でも近いうちに厚生年金に加入する予定がある人は、修正申告等の手続きが面倒になる場合があるので前納はおすすめできません。

また、自営業者等の国民年金の第1号被保険者の中には、より年金受給額を充実させるために国民年金基金に加入している人も多いと思います。

この国民年金基金も前納により割引が適用されますので国民年金基金に加入している方は国民年金基金の前納も検討してみて下さい。