ここでは定年退職後に鬱にならない予防策や鬱になった時の改善策についてまとめています。
定年退職後に限らず、鬱にならない予防策・改善策として一度目を通してみて下さい。
定年後うつ(退職うつ)とは
定年後うつとは、定年後に心身が不調(うつ状態)になることです。
会社を退職して、仕事を通して得られていたやりがいや気持ちの張りが失われたり、喪失感を感じたり、また、人と関わる機会が少なくなるなど、環境が大きく変わることで発症します。
定年退職という大きな環境の変化で発症するため「退職うつ」とも言われます。
朝から晩まで家でゴロゴロ。テレビを観たり新聞を読んだりしてばかりで外出もしない。
体力も気力も失われる上に人と関わる機会も少なくなると、生活にもハリがなくり、気分も段々と落ち込んでいきます。
定年後にこのようなうつ的症状への対策を行おうと思っても、気力がわかず、趣味を探すことさえ面倒になってしまいがちです。
その結果、深刻なうつ病を発症してしまいかねません。
そうならないためにも、定年退職する前から定年後の過ごし方について考えておく必要がありますし、既に鬱的症状になってしまったという人は、すぐに生活習慣を見直す必要があります。
定年退職後のうつ病の原因
定年退職後にうつ病を発症するキッカケは人それぞれですが、総じて言えることは、環境が大きく変化するためです。一種の適応障害です。
定年は、社会に出て最も大きい環境の変化の一つと言えるでしょう。
その結果、
- 目的や生き甲斐を失う
- 生活にハリがなくなる
- 人と会ったり話したりする機会が減る
- 社会との関係が希薄になる
- 生活のリズムが崩れる
といったことがストレスになり、それらが原因でうつ病に進行してしまうケースがあるのです。
定年退職後のうつ病のサイン
うつ的症状は早く察知して早期に対応するのが有効です。
- 睡眠障害(寝つきが悪い・何度も起きる・朝早く目が覚める、朝起きられない)
- 食欲の低下・過食
- やる気の低下
- 気分の落ち込みや喪失感
- 倦怠感
- 不安や焦燥感
- 孤独感
- イライラ感
などを感じたら悪化する前にすぐに生活習慣を見直して改善するようにしましょう。
そして深刻だと感じたら勇気をもってクリニックの門を叩くのがおすすめです。
うつ病は、早期対応が回復への近道です。
うつ病は心の病気ではなく脳の病気であることを認識する
単に気分が落ち込むことは誰にでもあることですが、症状の程度や生活への支障の出方などが深刻になると、うつ病と診断されます。
まだわかっていないこともありますが、うつは、脳内で精神現象をコントロールをしている、
- セロトニン
- ノルアドレナリン
- ドーパミン
などの3大神経伝達物質のバランスが狂うことで発症することが多いと考えられています。
ノルアドレナリンは意欲や活力を伝える働きがありますが、過剰になると、不安や恐怖、焦燥や取り乱す状態が出現します。
ドーパミンはやる気や集中力を司ります。
そして、それらの働きをコントロールしているのがセロトニンです。
従って、うつ病は、セロトニンの不足が主な原因の一つだと考えられています。
うつ病はセロトニン不足?
セロトニンは、自律神経のバランスを整え免疫力を高め、感情や精神面、睡眠など人間の大切な機能に深く関係する、別名「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質です。
ノルアドレナリンやドーパミンの分泌過剰・分泌不足にならないようにバランスを調節し、精神の安定や安心感、平常心を保たせる作用があります。
ノルアドレナリンは恐怖、驚き、緊張や不安など神経を興奮させるストレスホルモンと呼ばれる物質ですが、過剰になると攻撃的になったり、ヒステリーを起こしたり、パニックになったりします。セロトニンにはこれらの分泌をコントロールして暴走を防ぎ精神を安定させる司令塔としての働きがあります。
また、セロトニンは、精神的な面だけではなく、体温調節や食欲の制御、消化・吸収、排便など、体の様々な働きなど、自律神経と副交感神経の調整にも関わっています。
極度の疲労感が長期間続く慢性疲労症候群もセロトニン不足によるものと考えられています。
これらからも分かるようにセロトニンが不足すると自律神経の乱れや意欲・向上心の低下、うつ的症状、パニック障害、イライラ感、疲労、睡眠障害、ストレス障害といった症状がみられるようになります。
実際、病院の薬物療法で処方される抗うつ剤は、脳内のセロトニン量を増やす選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が中核を担っています。
うつ病はこのように脳内の神経伝達物質の分泌異常で発症していることが多いため、気持ち(心)の持ち方だけで治すことはできません。
むしろ、うつ病の人は気持ち(心)の持ち方を変えるのが困難な状態になっています。
うつ病の人に「頑張って」と言うのが禁句とされているのはこのためです。
うつ病は脳の神経伝達物質が異常であることを認識し、症状が重い場合は、無理に頑張ろうとはせずクリニックの診察を受け、適切な処置をしてもらうことが重要です。
定年退職後のうつ病の予防・改善の仕方
鬱の治療には、精神療法や薬物療法、電気治療(TMS治療)などがありますが、クリニックでうつ病と診断されると、多くの場合、脳内のセロトニン量を増やす抗うつ剤が処方されます。
実際、薬を服用して脳内でセロトニンの分泌が増えると、気分が安定し、幸せを感じやすくなります。また、集中力がアップしたりストレスを感じにくくなったりします。
と言うことは、薬に頼らずとも脳の神経伝達物質(セロトニン)の分泌を増やしたり、安定して分泌させる生活をすれば、うつ病の予防や改善ができるという訳です。
また、薬を利用している方もいずれは薬から離れる以上、生活面の改善は必要不可欠です。
そして、専門医の書いた様々な書籍やインターネットで調べたりすると、以下のような行動をすることでセロトニンを活性化でき、うつ病の予防あるいは改善ができると書かれています。
- セロトニンの原料を摂取する
- 朝、太陽の光を浴びる
- リズム運動をする
- 朝食を摂る
- 筋トレをする
- オキシトシンを分泌させる
- 感情を動かす
- 腸内環境を整える
- 質のいい睡眠をとる
- 瞑想をする
- 趣味を持つ
それでは、一つ一つ少し詳しく解説していきます。
セロトニンの原料を摂取する
セロトニンは体内で作られますので、まずはセロトニンの原料を摂る必要があります。
いくらセロトニンを活性化させる他の行動をしても体内のセロトニンの絶対量が少なくては十分な効果は期待できません。
そして、セロトニンは、
- トリプトファン
- 鉄
- ナイアシン
- 葉酸
- ビタミンB6
などを原料に作られます。
そして、脳内で効率よくセロトニンをつくるには、
- 炭水化物
も必要になってきます。
一つ一つ解説していきます。
トリプトファン
トリプトファンは、必須アミノ酸の一つです。
体内で生成できないので食事から摂る必要があります。
しかし、トリプトファンをはじめ上記の原料で腸で作られたセロトニンは残念ながら脳には届けられません。脳には血液脳関門という関所のようなものがあり、セロトニンはこの血液脳関門を通過できないためです。
腸で作られたセロトニンは、脳で作られるセロトニンとは異なり、腸のぜん動運動の促進や血液にのって前進をめぐり骨形成などの役割を担います。
一方、食事から摂取されたトリプトファンは、鉄やナイアシンとともに腸でセロトニンのモト(5-HTP)に合成されます。
そして、トリプトファンから作られたセロトニンのモト(5-HTP)が血液脳関門を通過して脳内でセロトニンが合成されます。
結果、セロトニンは90%以上が小腸の粘膜に存在し、8%は血小板に、そして、2%程度のセロトニンが脳内に存在しています。
尚、腸で作られたセロトニンも脳とやり取り(脳腸相関)をして精神に作用されている可能性はあります。脳腸相関については現在研究中です。
トリプトファンは、チーズ・牛乳・ヨーグルトなどの乳製品や豆腐・納豆などの大豆製品、米などの穀類、その他ナッツやバナナ、卵などに多く含まれています。
特に含有量が多いのがカツオやマグロ、鮭、豚ロース、鶏むね肉、ナッツ類などです。
白米やそば、パスタにも含まれていますので、偏った食事をしない限り不足するということはあまりないでしょう。
果物では、セロトニンの合成に必要な鉄やビタミンB6も含まれているバナナがおすすめです。
手っ取り早くサプリメント(トリプトファン)を摂取する手もありますが、過剰摂取もよくないと言われていますので、できる限りサプリメントに頼るのは止めた方がいいと思います。
鉄
鉄は酸素を運搬するのに必須のミネラルです。
うつやパニック障害の原因は鉄不足であるとする専門医が書いた書籍もあるくらい重要なミネラルです。特に生理のある女性はそうです。
健康診断などでの検査では主にヘモグロビンを見て、ヘモグロビン値が基準値であれば貧血診断とはされず正常となりますが、心の不調はフェリチンの値が重要です。
フェリチンは鉄を貯蔵する袋のようなもので全身に存在します。
フェリチンの値は通常の血液検査では確認できません。
少しうつの傾向がある人は血液検査で自分の体内の鉄の量(フェリチンの値)を測定してもらい、少なければ、吸収率のいいキレート鉄を飲むことをおすすめします。
ちなみに私が飲んでいる鉄は下のナウフーズのキレート鉄です(クリックするとamazonに遷移します)。精神科医が書籍で紹介していたサプリです。
但し、鉄の過剰摂取はよくありません。
厚生労働省によると1日の耐容上限量は成人男性は50mg、成人女性は40mgとされていますので飲み続ける場合は定期的に血液検査することをおすすめします。
ナイアシン
ナイアシンはビタミンB群のひとつ(B3)で、エネルギーの代謝に関係するビタミンです。
ナイアシンは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるほか、脳神経を正常に働かせる効果があると言われており、不足すると精神的に不安定となりイライラやうつ症状、不安などがあらわれることがあると言われています。
ナイアシンは食品中に含まれるだけでなく、人間の肝臓でも合成されています。
体内では、トリプトファンからも作られます(トリプトファン60㎎がナイアシン1㎎に相当)が、その時にビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6が必要になりますのでこれらのビタミンが不足するとナイアシンも不足する可能性があります。
ナイアシンは多くの食材に含まれていますが、特に魚介類や肉類、きのこ類、穀類に多く含まれています。
通常の食生活で不足することはあまりありませんが、アルコールをよく摂取する人は、ナイアシンはアセトアルデヒドを分解する酵素の補酵素として働くため不足する可能性があります。意識して魚介類や肉類、きのこ類、穀類を食べるようにしましょう。
葉酸
葉酸は水溶性ビタミンでこれもビタミンB群に属します。
ビタミンB12とともに赤血球の生産を助けます。
通常の食事をしている場合は、不足することはないでしょう。
ビタミンB6
ビタミンB6は、補酵素(酵素の働きを助ける成分)として多くのアミノ酸の代謝を助けます。
不足すると、うつ状態など神経系に異常が起こることもあるとされています。
ビタミンB6は、レバーや肉類、野菜類、穀類、魚介類、ナッツ類などに多く含まれており、食事以外でも腸内細菌によって合成され、供給されています。
ビタミンのサプリメントにはこういった成分がもれなく配合されていますので手っ取り早くサプリを活用してもいいと思います。
炭水化物
以上の材料をもとに、9割以上のセロトニンが腸で作られますが、先ほども書いたように腸で作られたセロトニンは脳には届きません。血液脳関門を通過できないためです。
腸で作られたセロトニンは、腸の中で腸を動かす指令を出す際に使われていますが、腸で作られたセロトニンも脳腸相関で鬱などの精神状態に影響を及ぼしている可能性があります。
第二の脳と言われる腸については現在研究中です。
一方、残りのトリプトファンや鉄、ナイアシンなどから作られたセロトニンのモト(5-HTP)が、血液を通して脳に運ばれ、それをもとに脳でセロトニンが合成されます。
しかし、脳内に取りこまれるアミノ酸の量は血液脳関門で制限されており、他のタンパク質(アミノ酸)の量が多いとセロトニンのモト(5-HTP)とそのほかのアミノ酸で脳内に取りこまれる量の競争が起きてしまいます。
つまり、他のタンパク質(アミノ酸)の量が多いとセロトニンのモト(5-HTP)が脳内に取り込まれる量も少なくなるという訳です。
特に動物性たんぱく質に含まれるBCAAというアミノ酸はセロトニンのモトを脳へ取り込みにくくする作用があるためセロトニン生成のためには植物性たんぱく質を摂るのがおすすめです。
プロテインを飲んでいる人もいると思いますが、セロトニンのことだけを考えるならば、プロテインは、ホエイプロテインよりソイプロテインがおすすめということになります。
ただし、動物性たんぱく質を摂っても一緒に炭水化物とビタミンB6を摂取すると、膵臓からインスリンが分泌され、トリプトファン以外のアミノ酸を筋肉へ取り込むよう働きかけます。
従って、トリプトファン以外のアミノ酸が筋肉などに使われる結果、血液脳関門におけるアミノ酸同士の競争が緩和され、セロトニンのモト(5-HTP)が血液脳関門を通りやすくなり、脳内で合成されるセロトニンも増えやすくなります。
つまり、炭水化物は脳のエネルギー源であるとともに、セロトニンのモトが脳内に取り込まれるのを助ける働きもあるという訳です。
ダイエットには、炭水化物の摂取を抑えるのは有効ですが、セロトニンのことを考えると炭水化物拭きのダイエットはNGで、タンパク質、ビタミン類、炭水化物などバランスの良い食事を心がけることが大切だということになります。
朝、太陽の光を浴びてセロトニンを活性化する
セロトニンの原料を摂ったらセロトニンをしっかり分泌させる必要があります。
セロトニンを分必させるには、適度に太陽光を浴びることが有効です。
そして、肌だけで光を浴びるのではなく、目(網膜)で光を感じる必要があります。
光を目で刺激として感じると、網膜を通して光刺激が視交叉上核と呼ばれる神経核に達し、セロトニンが活性化されます。
但し、目で太陽を直視してはいけません。
例えば日なたに居たり日陰から日なたを眺めるだけでもセロトニンは活性化します。窓越しだと浴びる照度が少なくなりますが、天気のいい日は、窓越しに太陽光を浴びるだけでも効果が期待できます。
太陽の光を浴びる時間と時間帯
太陽光を浴びる時間帯は、朝がおすすめ、というより朝は必須です。
勿論、朝以外の日中に浴びるのも有効です。
そして、一度に太陽の光を浴びる時間は、15分から30分が目安です。
夏は日差しが強く、直接日光を浴びると体への負担が大きくなるため、木陰・日陰などで15分程度過ごすのがおすすめです。窓越しでもOKです。
そして、太陽の光が心地よい春や秋、冬の季節になったら外に出て直接太陽光を浴びましょう。
朝、太陽の光を目の網膜で感じると、体内時計がリセットされ、脳内ではセロトニンが活性化し、睡眠物質であるメラトニンの分泌が停止します。
すると身体がだんだんと活動状態になり、気分も上向きになってきます。
どんよりした天気だと気分が晴れないのは、体内時計がリセットされにくく、セロトニンが活性化しにくいためです。
その例の一つが冬季うつです。
つまり、鬱的な症状のある人には太陽の光を浴びることは非常に重要なのです。
例えば、オフィスにこもりっきりでデスクワークをする人や屋内で作業している人などは、積極的に太陽の光を浴びるようにしましょう。
そして、セロトニンは、朝、活性化した後、日中ずっと分泌され、14~16時間ぐらいで睡眠ホルモンと言われるメラトニンに変わり眠気を感じるようになります。
従って、朝起きて30分以内に太陽の光を浴びるのが日中の気分や睡眠にも良い影響を与えます。
セロトニンは、貯蔵することはできないため、毎日、太陽光を浴びるのが大切です。
蛍光灯やLEDの光では照度不足
では、部屋の照明を明るくしてセロトニンは活性化されるのでしょうか。
残念ながら普通の照明では、照度が不足しています。
体内時計をリセットしてメラトニンの分泌をストップさせ、セロトニンを分泌させるには、2500ルクス以上の照度が必要とされています。
しかし、蛍光灯やLEDはせいぜい500~1000ルクス程度です。
太陽光の照度は、晴れた日で2万~10万ルクス程度。曇っていても屋外なら1万ルクス程度あるので、晴れていない日でも、起きたらカーテンを開けて、外の明るさを感じましょう。
健康な人であれば、室内でも日光の入る明るい部屋に居れば、体内時計がリセットされ、セロトニンも活性化されますが、メンタルが不調の人は日光が入っても室内では不十分なこともありますので、できるだけ窓際1m以内に居たり外に出て日光を浴びるのがおすすめです。
暗い曇りの日は少し長め(30分~40分)に外の光を浴びるようにしましょう。
しかし、太陽光の入らない間取りだったり、雨の日など極端に暗かったり、また、暑かったり寒かったりで外に出るのが億劫、といった人もいると思います。
そういう人のために、最近は、睡眠グッズとして季節性情動障害対策用に作られた照度の高い特別な照明があります。
下で紹介しているトトノエライトは、朝の太陽光に近い白い光を発光するだけでなく、夕方から夜にかけて分泌される睡眠物質メラトニンの分泌を促す赤い光も発光するのでおすすめです。
気になる紫外線もカットされています。
セロトニン活性だけでなく、眠りを誘発するメラトニンの活性もできますので睡眠障害の人にも改善の効果が期待でき、おすすめです。
LED(最大10W)なので仮に毎日5時間使っても電気代は月に50円以下ですし、寿命も15年以上持つ計算になります。日本製というのも安心です。
ちょっとお値段が高いのが残念ですがおすすめです。
光の浴びすぎも良くない
セロトニンは無限に増える訳ではありません。
1度に長く光を浴びすぎるとかえってセロトニン神経が疲れ、脳の自己抑制機能が働き、かえってメンタルが弱る可能性があると言われています。
朝であれば起きて1時間以内に15分~30分程度日光を浴びるのが適当です。
そして、朝だけでなく昼や夕方も適度な時間、日光を浴びるのが理想的です。
特に定年退職後は通勤がなくなり、外出する機会も少なくなります。太陽の光を浴びる機会が少なくなりがちですので意識的に太陽光を浴びるようにしましょう。
紫外線に注意
セロトニン活性に必要なのは可視光線が目の網膜に入ることなので紫外線は関係ありません。
従って、透明のUVカット眼鏡や、車のUVカットガラス越しで太陽光を浴びてもセロトニンは活性化します。紫外線を浴びるとシミや日焼けの原因になるのでUV対策をして光を浴びましょう。
尚、カルシウムやリンなどのミネラルの吸収に関わるビタミンDの生成のためには、紫外線が必要です。ビタミンDは日光を浴びることにより皮膚で合成されるため、手のひらなどはUVカットをせず、日光に当てることをおすすめします。
ビタミンDが不足すると骨の代謝異常を引き起こし、高齢者の場合は骨粗しょう症の要因になってしまう可能性もあります。
また、米軍の調査で、ビタミンDはセロトニンやドーパミンの合成・放出を変化させ精神活動に影響を及ぼすとされており、ビタミンDの欠乏とうつ病のリスクは相関することが明らかになっています。そういう意味では紫外線も一緒に太陽光を浴びることは有益です。
ビタミンDは、食品では、魚類に多く含まれており、肉類や卵類、乳製品やきのこ類などにも含まれていますし、サプリメントとしても販売されています。
リズミカルな運動でセロトニンを活性化する
適度な運動は、特に、リズミカルな有酸素運動はセロトニンを活性化するのに有効です。
リズムミカルな有酸素運動とは、ウォーキングや軽いジョギング、スイミングやサイクリング、エアロビクスなどの運動です。
そして、どれもリズムを意識して行うことが重要です。研究では普通のウォーキングや軽いジョギングでは、健康には良くてもセロトニン活性としてはあまり効果はないとされています。
セロトニンはリズム運動を始めて5分ほど経ってから分泌され、20分~30分でピークになり、その後、1時間半~2時間ほどピーク状態が続きますが、逆に運動をし過ぎて疲れてしまうと分泌が減っていきます。
そのためリズム運動をするときは1回につき5分から30分を意識しましょう。
そして、例えば毎日30分のリズム運動を約3ヵ月継続すると、セロトニン神経が物理的に変化し、長時間セロトニン分泌される脳に変化すると考えられています。
従って、運動を習慣化して継続することが重要です。
逆に運動不足は、セロトニン神経を衰えさせ、分泌が低下することでメンタルのトラブルを引き起こしやすくなります。
セロトニン活性には朝のウォーキングがおすすめ
ですのでセロトニンの活性には、、朝、太陽光を浴びながらウォーキングや軽いジョギング、スクワットなどのリズム運動をするのは非常におすすめということになります。
普段よりもやや早歩きで呼吸を意識しながらリズムを意識して歩くことが重要です。
ウォーキングの頻度は本来は毎日が理想的ですが、それが難しいのであれば、週に3回、朝20分~30分のウォーキングを目標にしましょう。
気分が乗らない時に無理に行うと逆にストレスになり、セロトニンは活性化しませんし、かえって調子を崩すことにもなりかねませんので無理は禁物です。
1日の中で連続して30分行うのが無理であれば10分を3回に分けて行っても有効とされています。
よくウォーキングなどの有酸素運動は、20分以上続けないと効果が出ないと言われますが、これは脂肪分解の場合です。
セロトニン活性には、10分でも十分効果があります。
セロトニン活性には咀嚼や腹式呼吸も有効
その他のセロトニン活性のリズム運動の一つとして、食事中の咀嚼やガムを噛んでの咀嚼、また、腹式呼吸など意識した深い呼吸やカラオケで歌うことなどもいいとされています。
朝食は必ず摂る
巷では16時間断食や1日1食生活なるものが流行っています。
それらを否定する訳ではありませんが、体内時計をリセットさせるには、朝の太陽光の刺激のほかに朝食を摂ることが有効です。
朝の光を刺激として受容すると体内時計にリセット作用を及ぼし、中枢時計⇒末梢組織が調節されますが、末梢組織は朝食を摂ることでさらに調節されることが近年明らかになっています。
朝食時にセロトニンの材料となる成分や炭水化物、腸の環境を整える成分を摂りながら咀嚼をすると体内時計のリセットやセロトニン活性にも尚更有効です。
筋トレをしてテストステロンを分泌させる
筋トレもうつ病の予防に有効です。
筋トレは、運動機能の低下を防ぐだけでなく、テストステロン(男性ホルモン)やセロトニン、ド-パミンの分泌も促します。
セロトニンの働きは上でも書いた通りですが、テストステロンは、男性機能を向上させるだけではなく、やる気やチャレンジ精神、闘争心をアップさせ、男性らしい精神や体を作ります。
また、適度なド-パミンの分泌は落ち込みにくい性格やポジティブ思考を作ります。
さらに、トレーニングによって鍛えられた筋肉自体に、うつ病などの精神疾患の原因物質を「解毒」する機能があるとされています。
鬱的症状が出てしまうと、いきなり筋トレをする気持ちにはならないと思いますので、まずはウォーキングなどできることから始め、ある程度体力や意欲が回復したら簡単な筋トレから始めてみるといいと思います。
余談ですが、長渕剛さんが筋トレを始めたのも重度のうつ病を発症したのがキッカケとか。STAY DREAMもその頃に作った曲です。経験した人しか作れない歌詞ですね。うつ病の人でこの曲を聴いて勇気づけられた人が何人いることか。
筋トレにはその他様々な効果があります。下の記事でまとめていますので参考にして下さい。
オキシトシンを分泌させる
オキシトシンとは、愛情ホルモンと言われている神経伝達物質です。
オキシトシンもセロトニンの分泌を誘発すると言われています。
オキシトシンは、スキンシップ(グルーミング)やまわりの人のために何か行動を起こしたり、やさしく接したりすることで、分泌されるという研究結果があります。
恋人や家族間、またペットとのスキンシップもそうですが、エステやマッサージによるスキンシップもオキシトシンを分泌する効果があると言われています。
また、気の置けない友人とゆっくり食事や会話をする、家族団らんを楽しむ、ボランティア活動をして人の役に立つといった心の触れ合いや、音楽や映画などで感動することもオキシトシンの分泌を促し、セロトニンを活性します。
尚、オキシトシンはメールやSNSなどの文字では分泌されにくいと考えられています。
感情を動かす
日常生活のおいてなるべく喜怒哀楽を表現することでもセロトニンは活性化します。
人と触れ合って笑ったりはしゃいだりして感情を動かすことも有効ですし、特に感動する映画などを観て涙を流した時はセロトニンが活性化し、自律神経も整うとされています。
腸内環境を整えてセロトニンを活性化する
第二の脳と言われている腸内環境を整えることは非常に重要です。
セロトニンは、脳や血液でも作られていますが、90%以上は腸で作られているということは上でも述べた通りです。
しかし、腸で作られたセロトニンは脳には届かず、腸を動かす指令を出す際に使われています。
つまり、腸内環境が乱れて例えば便秘になった場合は、腸が反応するまでセロトニンを分泌し続けるため、腸内環境改善のためにセロトニンが消費され続けます。
結果、脳に運ばれるセロトニンのもと(トリプトファンから作られる5-HTP)が減少してしまい、脳ではセロトニンが不足している状態になってしまいます。
いくら運動をしたり食事をして脳内のセロトニンの分泌量を増やそうと思っても腸内環境が整っていなければ、その原料となる成分が脳には届きにくいということです。
従って、腸内フローラ(腸内細菌)のバランスを適切に保ち、便秘や下痢を予防することが、脳内のセロトニンを増やすことにつながるのです。
腸内環境を整えるには、腸内の善玉菌を増やす必要があります。
そのためには、善玉菌のエサとなる食物繊維をたっぷり摂ることが重要です。
食物繊維は、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」に分けられますが、善玉菌のエサになりやすいのは水溶性食物繊維です。
食物繊維を多く含む食材は、ライ麦粉、ライ麦パン、オートミール、れんこん、ごぼう、にんじん、切り干し大根、なめこ、ごま(いり)などです。
アボカドやリンゴ、いちごなどの果物や豆類にも多く含まれています。
このうち水溶性の食物繊維が多く含まれるのがライ麦粉やライ麦パン、オートミール、切り干し大根やごぼう、アボカド、ごま(いり)などです。
また、発酵食品や乳酸菌も腸内環境を整えるには有効です。
食物繊維もそうですが、これらは腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整えます。
腸内環境が乱れている人は、まずは腸内環境を整えて下さい。
中にはそれだけでうつ症状が大きく改善する人がいます。
ちなみに漢方では、精神の改善は腸内環境の改善でもアプローチします。
質のいい睡眠をとる
適度な睡眠の時間には個人差があり、年齢でも違ってきますが、シニアの方の8割の人は7時間程度の睡眠をとった方がいいとされています。
そして、重要なのは睡眠時間だけでなく睡眠の質です。
睡眠の質を高めるには、
- 朝、光を浴びて朝食を摂りセロトニンを活性させること
- 日中、適度に活動すること
- 夜寝る前の3時間はスマホやパソコン、テレビなどを見ないこと
- 寝る1~2時間にお風呂に入って10分以上湯舟に浸かること
- 夕方以降はカフェインを摂取しないこと
がいいと言われています。
①は朝、光を浴びて朝食を摂ることで体内時計がリセットされ、その時に作られたセロトニンが15時間くらい経った後に睡眠物質と言われるメラトニンに変化するためです。
③夜寝る前の3時間はスマホやパソコン、テレビなどを見ると(ブルーライトを浴びると)メラトニンの分泌を抑制します。
④は、お風呂に入って温まった脳の深部体温が下がるのが、1~2時間後で、脳の深部体温が下がると、人は眠気を感じ、眠りやすくなるためです。
例えば、現在、ドラッグストアなどで睡眠の質を整えるサプリメントとしてグリシンが販売されていますが、グリシンには、深部体温を下げて深い睡眠に導く働きがあります。
⑤は、カフェインは覚醒作用があり、半減期(効果が半分になる時間)は2時間から8時間と幅がありますので、夕方以降にカフェインを摂ると覚醒して眠りにくくなったり、睡眠が浅くなったりします。
これらを実践しても、寝つきが悪かったり、夜、何度も目覚めたり、と睡眠の質が悪い人は、サプリメントや睡眠改善薬等の力を借りることも個人的にはいいと思います。
ベネフィットとリスクを考えた場合、睡眠障害によるリスクは、薬を飲むリスクより大きいこともあります。睡眠はそれだけ重要なので、睡眠障害に悩まされている人はまずはクリニックに行き医者と相談することをおすすめします。
瞑想をする
瞑想をすることによって脳の前頭葉にある前頭前野が活性化され、セロトニンが活発化すると言われています。
特に近年は、GoogleやFacebook、ゴールドマンサックスなどの一流企業でも社員教育の一環として行われているマインドフルネス瞑想が注目されています。
マイドフルネス瞑想には、集中力を高め、脳の記憶や空間学習能力に関わる海馬を増大させ、扁桃体を縮小する働きがあるとされています。
扁桃体は、特に恐怖や不安といったマイナスの情動に深くかかわり、様々な精神疾患でその機能異常が想定されている機関です。
この機関を縮小させることで、うつ病や不安障害(パニック障害を含む)などの改善にも効果が期待できます。
マイドフルネス瞑想については下の記事で解説していますので参考にして頂ければと思います。
趣味を持つ
定年退職後、生活にハリや生き甲斐も持つためにも趣味を持つことは重要です。
経済的・体力的に許す限り今までやれなかった好きなことを思う存分やるのが一番ですが、中には、これといってやりたいこともなく、時間を持て余している人、何か新しく趣味を始めたいもののなかなか趣味を見つけられないでいる人も多いはずです。
毎日やることが無ければ気分も塞ぎこみがちになります。
そういう人は趣味を探してみてはどうでしょうか。
特に、定年後は、
- 時間がかけられて飽きがこず、長く続けられる趣味
- お金がかからない趣味
- 脳と体の健康によい趣味
という視点から探せば生活にもハリが出て定年後うつの予防・対策にもなります。
まとめ
以上、定年退職後に鬱にならない予防策や鬱になった場合の改善策についてまとめてきました。
うつ病の予防・改善には、
- セロトニンの原料を摂取する
- 朝、太陽の光を浴びる
- リズム運動をする
- 朝食を摂る
- 筋トレをする
- オキシトシンを分泌させる
- 感情を動かす
- 腸内環境を整える
- 質のいい睡眠をとる
- 瞑想をする
- 趣味を持つ
ことなどが有効です。
中でも①のセロトニンの原料を摂取する、②朝、太陽光を浴びる、③リズム運動をする、④朝食を摂る、⑦腸内環境を整える、⑧質の良い睡眠をとる、などが重要です。
症状が悪化してからでは大変なので、日ごろから心の健康対策の一つとして意識して無理のない程度に実践するようにしましょう。