ここでは、介護福祉士とはどういう職業か、介護福祉士になるにはどうしたらよいか、また、介護福祉士試験の受験資格や難易度・合格率などを解説しています。
介護福祉士とは?
介護福祉士は、「社会福祉士及び介護福祉士法」にもとづいて設けられた、介護分野で唯一の国家資格です。認定資格であるヘルパーと言われる介護士が目指す上位資格で、介護の現場におけるリーダー的役割を担います。
さらに上位の資格に認定介護福祉士がありますが、こちらは民間資格です。
介護福祉士は、介護が必要なお年寄りや障害のある人の食事や入浴、排泄、歩行などの介助や介護者からの相談に応じてアドバイスをしたり、精神面で支えになったりするほか、在宅介護の介護方法や介護現場で働くヘルパーに対して指導やアドバイスなど管理者的業務も行います。
介護福祉士の資格を取って実務を5年以上経験すれば、ケアマネージャー試験の受験資格が得られ、「介護福祉士として5年の実務経験」と「 認定介護福祉士養成研修にて600時間の講義を受講していること」があれば、認定介護福祉士にもなることができます。
特別養護老人ホームや有料老人ホーム、通所介護(デイサービス)事業所やグループホーム、訪問介護事業所、身体障がい者施設、病院など働く場所も多く、仕事に困ることはありません。
介護福祉士 | 評価 |
---|---|
受験資格 | あり |
就職・転職に役立つか | |
定年後の再就職に役立つか | |
独立に役立つか | |
難易度 | 易しい |
介護福祉士になるには?
介護福祉士になるには国家試験に合格する必要があります。
資格取得をするルートには、
- 実務経験ルート
- 福祉系高校ルート
- 養成施設ルート
- 経済提携協定ルート(EPA)
の4つがあります。
資格取得ルート | 内容 |
---|---|
実務経験ルート | 3年以上介護等の業務に従事した者で実務者研修(※)を修了し、介護福祉士国家試験に合格した者 |
福祉系高校ルート | 福祉系高校を卒業し、介護福祉士国家試験に合格した者 |
養成施設ルート | 高等学校又は中等教育学校卒業以上の者で、指定の介護福祉士養成施設を卒業し介護福祉士国家試験に合格した者 |
経済提携協定ルート | 提携先の国籍の方が介護福祉士候補生として来日し、実務経験を3年積み介護福祉士国家試験に合格した者 |
実務者研修とは
実務者研修(介護福祉士実務者研修)とは、かつて実施されていた介護職員基礎研修やホームヘルパー養成研修1〜3級を一本化し、幅広い利用者に対する基本的な介護提供能力の習得を目標とした研修です。
コミュニケーション技術から痰(たん)の吸引や経管栄養などの医療的ケアまで、介護に関する専門的・実務的な知識と技術を習得する研修です。
介護職としての実務経験や資格を持っていない方でも受講可能ですが、すでに介護の資格を持っていれば、保有する資格によって科目が免除され、受講時間や受講期間が短くなります。
介護福祉士試験の概要
受験資格
介護福祉士国家試験は、介護福祉士になるには?でも解説した通り、下記の4つのうち何れかの受験資格が必要となります。
実務経験と実務者研修の修了
3年以上(実働日数540日以上)介護等の業務に従事した方で実務者研修を修了している者。
実務者研修は働きながらも取得可能なため、介護職員として3年間働きながら実務者研修の修了を済ませることもできます。
筆記試験合格後の実技試験は免除されます。
福祉系高等学校卒業
福祉系高等学校で所定のカリキュラムを修了し、卒業している者。
筆記試験合格後の実技試験は免除されます。
介護福祉士養成施設卒業
学歴 | 受験資格が得られる基準 |
---|---|
高等学校又は中等教育学校卒業以上の者 | 指定の介護福祉士養成施設で2年以上学んで卒業 |
福祉系の大学、社会福祉士養成施設、保育士養成施設のいずれかを卒業した者 | 護福祉士養成施設で1年以上学んで卒業 |
筆記試験合格後の実技試験は免除されます。
※2017年1月実施試験までは、指定の介護福祉士養成施設を卒業することで介護福祉士資格が取得ができましたが、法律の改定により、2018年1月実施試験からは、指定の介護福祉士養成施設を卒業し、介護福祉士試験を受験しなければならなくなりました。
EPA介護福祉士候補者
提携先の国籍の方がEPA介護福祉士候補生として来日し、実務経験を3年積むことで受験資格を満たします。EPA介護福祉士候補者受け入れ国としては、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国です。
実技試験を受ける必要があります。
試験日時
例年、8月上旬から9月上旬に申込書の受付がなされ、
- 1月下旬の日曜日に筆記試験
- 3月上旬の日曜日に実技試験
がなされます。
筆記試験は、全国各地で、実技試験は、東京と大阪で実施されます。
試験の方法と内容
筆記試験
筆記試験の出題形式は選択形式で、出題数は125問。総試験時間は220分です。
出題領域は、
- 人間と社会
- 介護
- こころとからだのしくみ
- 医療的ケア
- 総合問題
で構成されており、各領域で以下の11科目群から出題されます。
- 人間の尊厳と自立、介護の基本
- 人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術
- 社会の理解
- 生活支援技術
- 介護過程
- 発達と老化の理解
- 認知症の理解
- 障害の理解
- こころとからだのしくみ
- 医療的ケア
- 総合問題
EPA介護福祉士候補者の特例
EPA介護福祉士候補者には、介護福祉士資格試験を受ける際に、
- 筆記の試験時間(220分)が1.5倍に延長される
- 漢字にふりがなが付記された問題用紙で筆記試験を実施
- 難解漢字には、ふりがな付記や疾病名等への英語の併記等もあり
といった特例があります。
実技試験
介護等に関する専門的技能。与えられた課題を5分以内で実施します。
筆記試験は全国各地で実施され、実技試験は、東京と大阪の2会場で実施されます。
実務経験ルートを選んだ場合は免除されます。
受験手数料
18,380円
介護福祉士試験の難易度
合格基準
筆記試験の合格基準は、以下の2点を満たすこととされます。
- 全体の60%程度の得点(その年度の難易度で調整される)を超えるもの
- 試験科目11科目群すべてにおいて、それぞれ1点以上得点しているもの
実技試験は、多くの方が免除となるルートで受験しますが、試験時間5分、合格基準が100点中60%程度で実施されています。
合格率
例年、70%前後
実技試験の合格率については公表されていませんが、ほぼ合格できるとされています。
介護福祉士試験の難易度
難易度: 易しい
合格までの学習時間の目安:200時間
介護福祉士は転職・定年後の再就職に有利な資格
高齢化社会ということもあり、介護の専門知識・技術をもつ介護福祉士資格の重要性はますます高まっています。
その中において、介護業界は人手も不足しており、厚生労働省の試算では、団塊の世代が全員75歳以上となる2025年には、250万人の介護職が必要になり、およそ30万人近くの人手が不足すると試算されています。
このため、介護福祉士の有資格者は、転職・就職にも非常に有利になります。
60歳を過ぎると介護職は体力的に無理なのでは、と思われる方も多いと思いますが、60代や70代でも夜勤をこなすパワフルな介護士や介護福祉士は少なくないといいます。
体力に自信のある方は、定年後の再就職の選択肢の一つとして考えていいと思います。