ここでは、情報処理技術者試験の種類とその難易度などを解説しています。
情報処理技術者試験とは
情報処理技術者試験は、「情報処理の促進に関する法律」に基づいて経済産業大臣が実施するIT系の試験としては唯一の国家試験です。
1969年(昭和44年)に開始され、現在に至るまで50年以上実施され続けており、現在は、情報システムを構築・運用する「技術者」からITを活用する「利用者」まで、ITに関係するすべての人が活用できる試験として実施されています。
情報処理技術者試験は、時代の流れとともに、試験区分の名称変更や統廃合、分割、新設など制度の改正がかなり頻繁に行われてきました。
そして、現在、情報処理技術者試験は、次の4段階のスキルレベルに分類された13種類の試験で構成されています。
レベル | 定義 | |
---|---|---|
スキルレベル1 | エントリーレベル | 情報技術に携わる者に必要な最低限の基礎的知識を有し、要求された作業について、指導を受けて遂行できる。 |
スキルレベル2 | 基礎レベル | 基本的知識・スキルを有し、一定程度の難易度又は要求された作業について、その一部を独力で遂行できる。 |
スキルレベル3 | ミドルレベル | 応用的知識・スキルを有し、要求された作業について全て独力で遂行できる。 |
スキルレベル4 | 高度レベル | 高度な知識・スキルを有し、プロフェッショナルとして業務を遂行でき、経験や実績に基づいて作業指示ができる。また,プロフェッショナルとして求められる経験を形式知化し、後進育成に応用できる。 |
試験の難易度は、スキルレベル1のエントリーレベルが最も易しく、スキルレベル4の高度レベルが最も難しくなります。
特に、スキルレベル4(高度レベル)はプロフェッショナルとしての専門分野が確立し、自らのスキルを活用することによって独力で業務上の課題の発見と解決できるレベルの人材を対象とした上級試験で、一般的に、高度情報処理技術者試験と言われています。
情報処理技術者試験は、職種や業種を問わず、幅広く認知・活用されている試験なので、合格者は、情報処理技術者としての知識・技能が一定以上の水準であることを客観的に証明することができます。
また、時代のニーズにマッチしていることもあり、特にスキルレベルが3以上の資格は、就職・転職の際にも非常に役立ちますし、企業によっては、昇給や昇格時の判断材料とされたり、資格手当を支給するところもあります。
情報処理技術者試験は、全て、年齢・性別・学歴に関係なく誰でも受験できます。
情報処理技術者試験の種類
情報処理技術者試験には、次の13種類の試験があります。
参考:IPA 試験区分一覧
試験名と各試験区分の対象者像・試験時期
資格・試験名 |
各試験区分の対象者像 |
試験 時期 |
レ ベ ル |
---|---|---|---|
ITパスポート (IP) |
職業人となる者が備えておくべきITに関する共通的な基礎知識をもち、ITに携わる業務に就くか担当業務に対してITを活用していこうとする者 | 随時 | 1 |
情報セキュリティ マネジメント (SG) |
情報システムの利用部門にあって、情報セキュリティリーダとして、部門の業務遂行に必要な情報セキュリティ対策や組織が定めた情報セキュリティ諸規程(情報セキュリティポリシを含む組織内諸規程)の目的・内容を適切に理解し、情報及び情報システムを安全に活用するために、情報セキュリティが確保された状況を実現し、維持・改善する者 | 随時 | 2 |
基本情報技術者 (FE) |
高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者 | 随時 | 2 |
応用情報技術者 (AP) |
高度IT人材となるために必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した者 | 4月 ・ 10月 |
3 |
IT ストラテジスト (IT) |
高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術を活用して改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。また,組込みシステムの企画及び開発を統括し、新たな価値を実現するための基本戦略を策定・提案・推進する者 | 4月 | 4 |
プロジェクト マネージャ (PM) |
高度IT人材として確立した専門分野をもち、システム開発プロジェクトの責任者として,プロジェクト計画を立案し、必要となる要員や資源を確保し、計画した予算、納期、品質の達成について責任をもってプロジェクトを管理・運営する者 | 10月 | 4 |
システム アーキテクト (SA) |
高度IT人材として確立した専門分野をもち、IT ストラテジストによる提案を受けて、情報システム又は組込みシステムの開発に必要となる要件を定義し、それを実現するためのアーキテクチャを設計し、情報システムについては開発を主導する者 | 4月 | 4 |
ネットワーク スペシャリスト (NW) |
高度IT人材として確立した専門分野をもち、ネットワークに関係する固有技術を活用し、最適な情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守において中心的な役割を果たすとともに、固有技術の専門家として、情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守への技術支援を行う者 | 4月 | 4 |
データベース スペシャリスト (DB) |
高度IT人材として確立した専門分野をもち、データベースに関係する固有技術を活用し、最適な情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守において中心的な役割を果たすとともに、固有技術の専門家として、情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守への技術支援を行う者 | 10月 | 4 |
エンベデッド システム スペシャリスト (ES) |
高度IT人材として確立した専門分野をもち、組込みシステム開発に関係する広い知識や技能を活用し、最適な組込みシステム開発基盤の構築や組込みシステムの設計・構築・製造を主導的に行う者 | 10月 | 4 |
ITサービスマネージャ (SM) |
高度IT人材として確立した専門分野をもち、情報システム全体について、安定稼働を確保し、障害発生時においては被害の最小化を図るとともに、継続的な改善、品質管理など、安全性と信頼性の高いサービスの提供を行う者 | 4月 | 4 |
システム監査 技術者 (AU) |
高度IT人材として確立した専門分野をもち、監査対象から独立した立場で、情報システムや組込みシステムを総合的に点検・評価・検証して、監査報告の利用者に情報システムのガバナンス、マネジメント、コントロールの適切性などに対する保証を与える、又は改善のための助言を行う者 | 10月 | 4 |
情報処理安全 確保支援士 (SC) |
サイバーセキュリティに関する専門的な知識・技能を活用して企業や組織における安全な情報システムの企画・設計・開発・運用を支援し、また、サイバーセキュリティ対策の調査・分析・評価を行い、その結果に基づき必要な指導・助言を行う者
情報処理安全確保支援士試験合格者は、所定の登録手続きを行うことで、国家資格「情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)」の資格保持者となることができます。 |
4月 ・ 10月 |
4 |
情報処理技術者に士業国家資格が誕生
2016年10月に「情報処理の促進に関する法律」が改正され、情報処理安全確保支援士(略称:登録セキスペ)という士業国家資格が誕生しました。
情報処理安全確保支援士試験合格者は、所定の登録手続きを行うことで、国家資格「情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)」の資格保持者となることができます。
国家資格は、国家試験に合格するか、もしくは国の認可を受けた養成施設(学校)で認定要件を満たすことで取得できる資格です。国家資格には有資格者以外は業務を行うこなうことができない業務独占資格、有資格者以外はその名称を名乗ることができない名称独占資格、特定の事業を行う際に法律で義務づけられている必置資格などがあります。情報処理安全確保支援士は、名称独占資格(資格保有者でなければ情報処理安全確保支援士の名称の使用が禁じられています)です。
参考:業務独占資格・名称独占資格・必置資格
情報処理安全確保支援士の必置化が検討される
試験の免除制度
下記のいずれかの条件を満たした場合、その後2年間、受験申込み時に申請することで、情報処理技術者試験の高度試験と情報処理安全確保支援士試験の午前Ⅰ試験が免除され、午前Ⅱ試験から受験することが可能になります。
尚、高度試験とはレベル4の試験のことです。
- 応用情報技術者試験(AP)に合格
- 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験のいずれかに合格
- 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の成績をとる
その他にも一定の試験の合格者は、中小企業診断士試験の経営情報システムという科目が免除されたり、弁理士試験の一部が免除されます。
情報処理技術者試験の難易度
あまり知られてはいませんが、高度試験であるレベル4のシステム監査技術者やITストラテジストなどは、非常に難易度の高い試験です。
論文もありますのでしっかりとした試験対策が必要です。
それぞれの試験の難易度の目安は以下の通りです。
スキルレベル | 難易度 | 合格までの 学習時間の目安 |
---|---|---|
エントリーレベル ITパスポート |
易しい | 200時間 |
基礎レベル 情報セキュリティマネジメント 基本情報技術者 |
やや 易しい ~ 普通 |
300時間 |
ミドルレベル 応用情報技術者 |
難しい | 1000時間 |
高度レベル システムアーキテクト ネットワークスペシャリスト データベーススペシャリスト エンベデッドシステムスペシャリスト ITサービスマネージャ 情報処理安全確保支援士 |
かなり難しい | 1200時間 |
高度レベル ITストラテジスト プロジェクトマネージャ システム監査技術者 |
かなり難しい | 1500時間~ |
尚、情報処理技術者試験は、試験の改正が多く、コロコロと改正されていく試験に対応するのが困難なのか、通信講座も少ないのが現状です。
高度レベルは専門的で難易度の高い試験ですが、殆どの試験は独学で学習する必要があります。
まとめ
情報処理技術者は、時代のニーズにマッチした人材で、需要も非常に多い職種です。
このため情報処理技術者試験の特にミドルレベル以上の資格保有者は、企業内においても昇進昇格に有利となりますし、就職や転職にも有利になります。
特にこれからのAIやロボットの発達により、淘汰されていく職業が多い中、AIを使う方にまわるか使われる方にまわるかは将来を大きく作用します。
その中で情報処理技術者は時代の波に乗ることができ、仕事に困るリスクも少なくなります。
また、定年後の再雇用・再就職時においても有利に働きますし、経験と高度レベルの資格を併せ持てば独立も可能となります。